1992 Fiscal Year Annual Research Report
サケの生体磁気センサの抽出とその地磁気検出機構の研究
Project/Area Number |
02808052
|
Research Institution | Chiba University. |
Principal Investigator |
榊 陽 千葉大学, 工学部, 教授 (80005280)
|
Keywords | 生体磁気センサ / 生体磁性物質 / 磁気コンパス / サケの回遊 |
Research Abstract |
1。三半規管における磁性微粒子の発見 昨年度、三半規管に磁性物質(2価および3価の鉄)のあることを染色法で確かめたが、今年度は磁性物質の電子顕微鏡による観察および電子線回折やEDXAを用いた成分分析を行った。磁性物質は三半規管の組織内にも管のリンパ液内にも存在する。リンパ液内から抽出した磁性物質は直径20-50nmの微粒子の集合体で、篩骨等他の組織から見いだされたものとほぼ同様の形態であった。またその主成分は鉄とセリュームの化合物であり、化学式はFeCe_2O_4で表されるものと思われる。三半規管は平衡感覚器官で脳に近く、ここに磁石があることは、磁気センサによる回遊説に有力な根拠を与えるものと考えられる。今後磁界による磁石の動きを電気信号に変換するTransducerや電気信号を脳に伝える神経系の発見が残された課題である。このため現在、三半規管を含む組織のパラフィン包埋・薄切・染色によって、これらの器官の発見に努めている。 2。卵における磁性物質 昨年度染色法で、卵に磁性物質が存在することを確かめたが、今年度は溶解法も併用して、磁性物質の電子顕微鏡による観察及び成分分析も行った。この結果、未授精の卵に既に成魚と同様な磁性微粒子の集合体が存在することが見いだされた。また鉄染色法を用いた観察の結果、卵が受精後細胞分裂が進むに従い、染色された部分の形態が変化すること、Fe^<2+>イオンが分散し光学顕微鏡による観察が難しくなっていった等のことが明らかになった。これにより、磁性物質は親から遺伝的に受け継いでいることが確かめられた。またその成分も、成魚と同様に、FeCe_2O_4と表されることが判明したことは興味深い。これらの磁性物質が授精後体内でどのように磁気センサに形成されて行くかが、残された研究課題である。
|
-
[Publications] 青山 亮一,榊 陽,小倉 未基,加藤 守: "紅サケ頭部における磁性微粒子の分布について" 日本応用磁気学会誌. 16. 594-597 (1992)
-
[Publications] M.Ogura,M.Kato,N.Arai,T.Sasada,Y.Sakaki: "Magnetic Particles in Chum Salmon(Oncorhynchus Keta):Extraction and Transmission Microscopy" Canadian Journl of Zoology. 70. 874-877 (1992)
-
[Publications] Y.Sakaki,R.Aoyama,A.Yano,M.Ogura,M.Kato: "Biogenic Magnetic Crystal Extracted From Sockeye Salmon" Proceedings of ICE-6. (1993)
-
[Publications] Y.Sakaki,N.Daiku-hara,M.Ogura: "Modeling and Analysis of Magnetic Field Sensory System Extracted From Sockeye Salmon" Proceedings of ISEM-Sapporo. (1993)