1990 Fiscal Year Annual Research Report
Fーアクチン浸透圧に対する弾性応答を基礎にした細胞の体積調節機構の研究
Project/Area Number |
02808053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 忠直 京都大学, 理学部, 助教授 (90093187)
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Keywords | Fーアクチン / 細胞骨格 / 細胞の体積調節 / 溶積流 / ABP / ゲルゾリン / オスモティック・ストレス / オスモエラスティック・カップリング |
Research Abstract |
細胞膜直下の細胞皮質にあるFーアクチンは、actinーbinding protein(ABP)によって、架橋されることにより等方的なゲル構造を取っている。また、μM濃度のカルシウムイオンが存在すると、ゲルゾリンがアクチンフィラメントを切断する結果、ゲル構造が壊れ、ゾル状態に転移する(ゲル・ゾル変換)。このような構造及び構造変化が細胞運動及び細胞の体積調節に果たす役割を明らかにする目的で、in vitroの再構成系を用いて今年度は以下の研究を行った。 1.子宮(uterus)より、抽出・精製したABP、豚血清より抽出・精製したゲルゾリン及び兎骨格筋より抽出・精製したアクチンを用いて、細胞皮質にみられるアクチンゲルを再構成し、オスモメ-タ-を用いた「モデル細胞」系を用いて、そのゲルのオスモティック・ストレスによって引き起こされるFーアクチンの体積変化を測定し、以下の結果を得た。 (1)Fーアクチンのある濃度以上(3mg/ml)では、オスモティック・ストレスによる溶液の体積変化が見られなくなる。 (2)ABPは体積変化を起こさなくなるFーアクチンの濃度を減ずる(0.5mg/ml)とともに、再び体積変化を引き起こすようになるオスモティック・ストレスの閾値強度を著しく増大させる。 (3)上記のABPの効果は、ABPによりFーアクチンのゲル形成と密接な関係がある。 (4)μM濃度のカルシウムによって活性化されたゲルゾリンにより、アクチンフィラメントを切断すると上記のABPの効果は一部消失する。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] A.Suzuki: "Formation of liquid crystalline phase of actin filament solutions and its dependence on filament lengthas studied by optical birefringence" Biophys.J.59. 25-30 (1991)
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[Publications] 伊藤 忠直: "オスモエラスティック・カップリング ー浸透圧の不均衡のもとで働く新しい熱力学力ー" 生物物理. 31. 18-23 (1991)
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[Publications] T.Ito: "Regulation of osmoticallyーdriven water flow of Fーactin solutions by ABP" Biochemistry.