2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J00038
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
須長 一幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フレーゲ / フレーゲ算術 / 論理主義 / ヒュームの原理 |
Research Abstract |
私の研究目的は、フレーゲ算術を端緒として、我々の論理・算術への理解の構造を探ることであったが、今年度の研究は主に、第二階の論理の特性と、第二階の論理に関する存在論的関与をめぐる議論のサーヴェイに充てられた。 フレーゲの定理に用いられる第二階の論理に関して、論理主義者は次のような批判に答えなければならない。つまり、第二階の論理は実際には論理というより数学なのであって、仮に第二階の論理に算術を還元したところで、論理主義が本来持つはずの認識論的な優位性は獲得できない、という批判(クワイン、シャピロ)である。第二階の論理の表現力が第一階の論理のそれよりも強いこと、加えて、第二階の論理は述語の量化を含み、従って少なくとも見かけ上は集合のような抽象的対象への存在論的関与を必要とすることはよく知られている。それゆえ、算術への認識を論理への認識によって説明しようとする論理主義者にとっては、われわれがかくも強力な表現力を持ち、抽象的対象にも関与しうる第二階の論理をどのように認識するか、についての説明責任がある。 この批判に対して本研究は、特に第二階論理の存在論的関与について「中立主義」の立場から以下のような示唆を得た。中立主義とは、束縛変項はそれらが置き換えている原子的な諸表現の意味論的機能を一般化しているにすぎない、とする立場であり、そこでは、第二階の量化に関しても、二階の束縛変項によって置き換えられる述語表現が、すでになんらかの抽象的対象を引き合いにする場合にのみ、抽象的対象への存在論的コミットメントが生じるだけであるとされる。それゆえ中立主義においては、既に第一階論理において受け入れられた述語の解釈について、第二階において特別になにかが問題とされるということはない。中立主義をとることで、算術に対して第二階の論理がもつ認識論的な優位性の確保、という論理主義において必要とされる条件が満たされうる。 以上の結論が、今年度の研究で得られた知見である。
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