2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J00681
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
野中 里佐 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | テトラサイクリン / 薬剤耐性 / 遺伝子伝達 / 海洋細菌 / リボソーム保護 |
Research Abstract |
本研究の目的は「海洋細菌がその環境中に存在するDNAをどのように利用しているのか」を明らかにすることである。海洋環境中のDNAは「遺伝物質」として機能すると同時に、C、N、P源となる「溶存有機物」としての役割を果たしていると考えられる。第一年目である、平成14年度はまずDNAの遺伝物質としての性質に着目した。 養殖現場においては細菌性疾病の防除、治療を目的にオキシテトラサイクリンが頻繁に用いられており、薬剤耐性菌の出現が問題となっているが、海洋環境中にどのような耐性遺伝子が存在するかということや細菌が耐性を獲得するメカニズムについての知見は極めて少ない。そこで、日本および韓国沿岸の養殖魚および海水より分離されたオキシテトラサイクリン耐性菌を対象にテトラサイクリン系薬剤耐性遺伝子のひとつであるribosomal protection protein (RPP)遺伝子の分布をPCRを用いて調査した。 その結果、養殖ブリ由来腸内細菌のうち、Vibrio sp. 30株中12株、Pseudomonas 3株中1株、グラム陽性菌3株中3株からRPP遺伝子が検出された。また、香川県の養殖場由来の種々の病魚より分離されたVibrio sp. 15株中2株、Lactcoccus garvieae 7株中6株、Photobacterium damsela subsp. 1株中1株から、韓国の養殖場由来の病魚より分離されたVibrio sp. 31株中8株、海水由来Vibrio sp. 27株3株からRPP遺伝子が検出された。シークエンス解析を行った結果、これらのRPP遺伝子はTet Mであることが明らかとなった。Tet Mは臨床、畜産現場および土壌由来の多くのグラム陰性・陽性菌から検出され、臨床の現場および環境中に広く分布していることが報告されている。 以上の結果より、(1)多くの養殖ブリ腸内細菌および海水由来細菌が、臨床や畜産現場等の陸上環境のテトラサイクリン耐性菌と共通の耐性遺伝子を保有していること、また(2)日本および韓国沿岸と海洋環埠中の広い範囲にわたってさまざまな細菌に分布していること、(3)これまでに検出例のない、グラム陰性菌3属、陽性菌1種がTet Mを保有していることが新たに明らかとなった。 さらに、これらのTet M保有株は、一例を除きすべて、最小発育阻止濃度(MIC)125μg/mlもしくは250μg/mlとオキシテトラサイクリンに対して高い耐性を示した。 本研究結果は、Tet Mの海洋環境における分布の初の報告であり、本遺伝子と養殖場における薬剤耐性菌出現の関係、および陸上・海洋間での遺伝子伝播・循環の可能性を強く示唆するものである。
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[Publications] L.Nonaka, S.Suzuki: "New Mg^<2+>-dependent oxytetracycline resistance determinant Tet34 in Vibrio isolated from marine fish intestinal contents"Antimicrobial Agents and Chemotherapy. 46(5). 1550-1552 (2002)
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[Publications] L.Nonaka, T.Isshiki, S.Suzuki: "Distribution of the oxytetracycline resistance determinant Tet34 among bacteria isolated from diseased fish"Microbes and Environments. 17(1). 26-31 (2002)