2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J01880
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶 さやか 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近代史 / ナショナリズム / 地域研究 / ポーランド:リトアニア:ベラルーシ:ウクライナ |
Research Abstract |
今年度は、分割後のポーランド=リトアニア国家のうち、ワルシャワ公国(後のポーランド王国、現在のポーランド中・東部)と、ロシア領内の他地域(現在のリトアニア、ベラルーシ、ウクライナ)に注目して研究を行った。具体的には、ナポレオンによるモスクワ遠征時のポーランドとリトアニアの関係や、ロシア皇帝の支持を得て創設されたポーランド的なヴィルノ大学の活動について考察を進めた。したがって、今年度の科学研究費補助金は、主に、両テーマの関連文献・史料を国内、およびポーランドやリトアニアの文書館・図書館から収集することにあてた。一つめのテーマ、モスクワ遠征時のポーランドとリトアニアについては、ともに旧領土全体を統合しての独立を目指し、分割された国家全体を「ポーランド」とみなしているとの結論を得た。だが、リトアニアの支配層には、依然一元的なポーランド国家への反発があることや、多層的なアイデンティティが存続していることも指摘できた。また、11月3日に京都大学西洋史読書会大会で、「ナポレオン時代のポーランドとリトアニア-分離と統合の狭間で-」と題して、この研究についての口頭発表を行った。現在、このテーマで論文を準備中である。他方、ロシア領における文化的な自治の面で大きな役割を果たした、ヴィルノ大学およびその管轄下の初等・中等の公教育網については、先行研究の整理・史料収集の段階である。現時点では、先行研究によって以下の二点を把握している。ロシア領では、ポーランド化した貴族が言語や宗教の異なる民衆を支配していたが、ヴィルノ大学はポーランド的な支配階層に、従来と変わらぬ教育を保障しただけでなく、地元の民衆文化への関心を生んだこと、当大学関係者によってポーランド史とは別個のリトアニア史が書かれ始めるなど、歴史認識においても重要な変化があったことである。
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