2003 Fiscal Year Annual Research Report
フッ化水素系室温溶融塩の高導電性機構の解明と高機能化
Project/Area Number |
02J02057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 一彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(PD) (30574016)
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Keywords | 室温溶融塩 / イオン性液体 / 導電機構 / 構造解析 / X線回折 / ルイス酸塩基反応 / 電気化学 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に続き、HF系室温溶融塩を出発物質に用いたフルオロ酸塩基反応を用いたフルオロアニオンを含む様々な室温溶融塩の合成を行い、得られた塩についてその物性を調べた。具体的にはEMImBF_4,EMImPF_6,EMImAsF_6,EMImSbF_6,EMImNbF_6,EMImTaF_6,EMImWF_7を合成し、これらの導電率、粘性率、密度などを測定した。また共通のEMImカチオンを持つこれらの塩のうち、六フッ化物アニオンの塩についてはアニオンのサイズが大きくなるとともに、融点が低下する傾向があることが分かった。このうちEMImAsF_6とEMImSbF_6の固体構造を決定し、両者の結晶構造が報告にあるEMImPF_6と同じであることを見出した。EMImWF_7もこれらの六フッ化物アニオンの塩と同様の傾向に乗ることが分かったが、EMImBF_4についてはアニオンが小さいにもかかわらず融点が低く、その固体構造に特殊な点があると考えられる。 HF室温溶融塩を合成する上でカチオンとしてこれまでに芳香族系であるアルキルイミダゾリウムやブチルピリジニウムなどを用いて、その塩が優れた特性を示すことをこれまでに報告してきた。今回、芳香族系ではない環状アンモニウムカチオンであるアルキルピロリジニウムを用いて、同様にHF系室温溶融塩が合成できないかと考え、実際に合成を行った。合成の際にはピロリジニウムカチオン(RMPyr)上の窒素に結合したアルキル側鎖のうち片側をメチル基とし、もう一方をメチル基からブチル基まで炭素数を変化させた。その結果、側鎖がエチル基より長い場合に室温で液体の塩となり、その際の組成はRMPyr(HF)_<2.3>Fと芳香族系のカチオンを用いた場合と同じになることが分かった。これらの塩は他の室温溶融塩と比較して、高い導電率を示すとともに、芳香族系のカチオンをもちいた場合と比較して、5V前後という広い電気化学窓を持つことを見出した。 また、電気化学分野以外への応用として、HF系室温溶融塩を用いたアルケン類のハロフルオリネーション反応についても共同研究として行っている。
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[Publications] R.Hagiwara, K.Matsumoto, Y.Nakamori, T.Tsuda, Y.Ito, H.Matsumoto, K.Momota: "Physicochemical properties of 1,3-dialkylimidazolium fluorohydrogenate room-temperature molten salts"Journal of the Electrochemical Society. 150(2). D195 (2003)
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[Publications] K.Matsumoto, R.Hagiwara, R.Yoshida, Y.Ito, Z.Mazej, P.Benkic, B.Zemva, O.Tamada, H.Yoshino, S.Matsubara: "Syntheses, structures and properties of 1-ethyl-3-methylimidazolium salts of fluorocomplex anions"Dalton Transactions. 2004. 144 (2004)
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[Publications] H.Yoshino, S.Matsubara, K.Oshima, K.Matsumoto, R.Hagiwara, Y.Ito: "Halofluorination of alkenes with ionic liquid EMIMF(HF)_<2.3>"Journal of Fluorine Chemistry. 125. 455 (2004)