2003 Fiscal Year Annual Research Report
11〜13世紀アンダルス(イスラーム・スペイン)における暦と祭
Project/Area Number |
02J02223
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
佐藤 健太郎 財団法人東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | マウリド / 預言者生誕祭 / 祭 / シャリーフ / ウラマー / イスラーム法学 / スーフィー |
Research Abstract |
2003年5月にムルシア(スペイン)で開催された国際学会International Conference on Islamic Legal Studiesに出席し,預言者生誕祭(マウリド)に対するイスラーム法学者たちの見解の分析結果を報告した。この時の報告では,預言者生誕祭にかかわる論争は主にスーフィーたちの行為の是非が焦点になっていたことを強調した。次に,預言者生誕祭と国家とのかかわりについて検討した。それに関連して9月におこなったモロッコ国立図書館での史料調査では,未刊行の手写本『イスラーム君主への助言』を通してマリーン朝においては預言者裔(シャリーフ)優遇政策と国家行事としての預言者生誕祭がきわめて密接な関係にあったことが明らかになった。また,西方イスラーム世界において預言者生誕祭をはじめて導入したアザフィーの『連ねられた真珠』の手写本からは,彼の議論が先行する預言者崇敬の潮流の中に位置づけられることが見て取れた。これについては,3月の巡礼研究会で報告した。一方,ナスル朝においては必ずしもシャリーフ優遇政策は明確な形では見て取れない。にもかかわらずナスル朝国家においても預言者生誕祭が挙行されていたことについては,マリーン朝との外交関係を考慮に入れる必要があるだろう。また,マリーン朝からハフス朝へ亡命したイブン・マルズークの『二つの庭園の果実』の手写本では,ライラ・アル=カドルと預言者生誕祭のいずれが尊いかを論じているが,著者はハフス朝スルタンの御前で同じテーマについて討論がなされたとき,預言者生誕祭に与している。ここにもマリーン朝流の預言者生誕祭に影響を見て取ることが出来るため,今一度,当時のマリーン朝の宮廷文化における影響力について検討しなおしてみたい。
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