2002 Fiscal Year Annual Research Report
占領下(1940-44)のパリにおける、フランス人作曲家の音楽活動の検証と考察
Project/Area Number |
02J03506
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田崎 直美 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 音楽学 / 文化史 / フランス / 20世紀 / 第二次世界大戦 / ヴィシー政権 / オペラ座 / オペラ・コミック座 |
Research Abstract |
本研究はこれまで具体的検証が乏しかったドイツ占領下(1940-1944年)のパリにおける音楽様相の一端を明らかにすることを目的としている。本年度は、ヴィシー政府(時のフランス政権)の文化面における政策が当時のパリにおける音楽活動に与えた影響という視点より、国立劇場であったパリ・オペラ座及びオペラ・コミック座における活動内容について、そこで上演されたフランス人作曲家による新作を中心に検証と考察を行った。具体的には、以下の三点について調査と分析を行い、占領前(人民戦線政権以降)との比較を通しながら、占領下における音楽政策のあり方とその反映についての考察を行った。 1.新作に対する運営側の方針 占領下の両劇場ではフランス人芸術家の保護政策が強化され、毎シーズン一定数の「フランス人による」新作上演が義務付けられていた。またオペラ・コミック座では、占領前に上演が決定された作品が上演されず、逆に占領前に上演が否決された作品が上演されるなど、新作上演に対する実行性に変化がみられる。 2.新作の上演状況 両劇場では、新作の再演に関して、占領下の方が占領前よりも活発であった。またオペラ・コミック座では、占領下における上演新作の三分の一は国家委嘱作品であること、小規模の新作を既に有名な作品と同時上演することにより収益の確保を図っていたこと、が分かった。 3.新作の梗概及び音楽的特徴 オペラ座の新作では、占領下の特徴として、梗概内容における場所設定の限定および音楽様式における特定モチーフの頻繁な使用が認められた。オペラ・コミック座の新作では、民謡/シャンソン・ポピュレール的要素およびライト・モチーフの使用が、占領下に多く認められた。 これまでの考察より、占領下における両劇場では基本的には占領前と同じ上演方針を保ちつつも、上演する新作の選択とその内容に、当時の文化政策、すなわちフランス的要素および国民革命的要素の反映をうかがうことができる。
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Research Products
(1 results)