2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J05275
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂井 亜規子 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 消耗 / 涵養 / 質量収支 / 熱収支 / 日射 / 顕熱 / 潜熱 / 再凍結 |
Research Abstract |
本研究は中国乾燥域における氷河からの流出水量が、気候変動に応じてどう変動してきたかを明らかにするのが目的である。以上の目的のためには、まず現在の氷河の消耗・涵養・流動などの素過程を明らかにする必要がある。そこで、今年度は特に観測に集中した。 6月に中国の祁連山、七一氷河において、気象測器、水位計、質量収支観測のためのステークなどを設置した。9月にはデータを回収し、さらに一部の測器を回収した。以上の現地観測データを1次解析し、氷河の質量収支、氷河からの流出水量のデータを得た。 えられたデータより、熱収支計算から融解にはどういう熱要素が効いているのか解析した。氷河が融解している際、日射、長波放射、顕熱、潜熱の4つの熱が融解に寄与する。観測をおこなった七一氷河においては日射が最も効いていることが分かった。その理由はクリオコナイトという生物のため氷河表面が汚れていることでアルベドが低くなり、表面が日射を吸収しやすくしていることが主な理由である。 逆に氷体を冷やす熱は潜熱が大きいことがわかった。これは七一氷河の大気が乾燥していることが理由である。 また氷河上に降った雨や融解水がどの程度流出しているか計算した。氷体が0℃のときは、氷河からの流出は雨と融解水がそのまま流出するが、氷体がマイナスのときには、雨や融解水の一部は再凍結する。解析の結果、雨と融解水の半分に近い量が再度凍結しており、この氷河では流出を見積もる際、再凍結を考慮に入れなければならないことが明らかになった。
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[Publications] Rijan Bhakta Katastha, Y.Ageta, M.Nakawo, K.Fujita, A.Sakai, Y.Matsuda: "Positive degree-day factors for ice ablation on four glaciers in the Nepalese Himalayas and Qinghai-Tibetan Plateau"Bulletin of Glaciological Research. 20. 7-14 (2003)
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[Publications] Naito, N., T.Kadota, K.Fujita, A.Sakai, M.Nakawo: "Surface lowering over the ablation area of Lirung Glacier, Nepal Himalayas"Bulletin of Glacier Research. 19. 41-46 (2002)
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[Publications] Iwata, S., Y.Agata, N.Naito, A.Sakai, C.Narama, Karma: "Glacial Lakes and their outburst flood assessment in the Bhutan Himalaya"Global Environmental Research. 16巻1号. 3-17 (2002)