Research Abstract |
匂いレコーダの実現に向けて,本年度の目標は,匂いを構成する成分数の拡張と環境変化に対するロバスト性の向上であった.それに対して,以下に挙げる成果を得た. 1.従来,高価なマスフローコントローラを用いて匂い調合装置を構成していたため,ハードウェアの制約で多数成分化が困難であった.そこで,新たに,安価な電磁弁をΔΣ変調法で開閉制御して任意濃度の匂いを発生する手法を開発した.この成果はSensors and Actuators B,No.87,2002において発表した.この手法を用いて8成分用の調合装置を作製し,5成分臭の記録に成功した.さらに,14成分で構成した典型的なリンゴ臭を5成分の混合臭で近似記録することに成功した.この成果はSensors and Actuators B,No.89,2003において発表した.また,16成分用の調合装置も作製したので,その動作確認を行なってから,それを用いた検討を行なう予定である. 2.成分数の増加に関して,上記のようなハードウェアの制約に加え,匂い成分に対するセンサの多重共線性が増加し,各成分の調合比定量が難しくなるという問題点もあった.そこで,特異値分解法や二値量子化法という匂いレシピの探索空間を制限して多重共線性の問題を解決する手法を開発した.リンゴ臭の匂い記録を行い,8成分を用いた匂い記録再生に成功した.この成果はSensors and Actuators B,No.89,2003とIEEE Sensors Journal(in press)に発表(予定)した. 3.屋外などで匂いを記録する場面では,環境が変化しても安定に記録する必要がある.そこで,対象の匂いを実時間でモニタする実時間参照方式という匂い記録法を考案し,温度や湿度変化によらず,安定して記録できることを示した.この成果は電気学会論文誌E,Vol.122-E,No.6,2002において発表した.また,本手法では,匂いが動的に変化した場合でもそれに追従するように匂いを記録・再現できる.このことを実験により確かめた.その成果はSensors and Actuators B(in press)において発表予定である.
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