2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安達 直子 (旦 直子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 乳児 / テレビ / 認知 |
Research Abstract |
本研究は、乳児が映像つまり2次元の情報媒体で示された情報をどのように認知しているのか、そして映像を外界の事物とどのようにして関係付け表象しているのかを明らかにすることを目指すものである。本実験では(1)Pierroutsakos & Troseth(2003)で示されたような画面中の対象に対する把握行動がAB課題においても見られるかどうか(2)実物でのAB課題と画面上でのAB課題において乳児の反応にどのような対応関係が見られるのか、を確かめた。 被験児:9ヶ月児20名であった。それぞれの乳児は課題1と課題2に参加した。 課題1:乳児の正面30cmのところに置かれたテレビ画面(CRTディスプレイ)上で刺激事象が提示された。事象は(1)赤と緑のカップが左右に2つ並べられており、ターゲットのカップの前にはおもちゃ(人形)が置かれている(2)画面上部から出てきた手が両方のカップを持ち上げ、ターゲットのカップがおもちゃを隠すように再び2つのカップが床に置かれる(3)手が引っ込み、2つのカップだけが並べられた状態が30秒間続く、というものであった。(3)の期間での乳児の反応が観察された。乳児の反応は次の5つの段階に分類された。段階1:手を動かさない、段階2:画面以外に手を伸ばす、段階3:画面に手を伸ばす、段階4:画面上のカップに手を伸ばす、段階5:画面上の正しいカップに明確に手を伸ばす、であった。それとは別に画面上のカップに対して把握行動を示すかどうかも記録された。 課題2:課題1の画像で使われたカップとおもちゃの実物を用いて、乳児の前で通常のAB課題が対面した実験者によって実施された。その手順は(1)課題1と同じ事象を提示する(2)カップからおもちゃを取り出し、反対側のカップの前に置いて同様の事象を提示する、というものであった。1回目と2回目で乳児が探索を行ったかどうか、行った場合正しいカップを探索したかどうかが観察された。 結果:<画面上のオブジェクトに対する把握行動>把握行動を示した乳児は20人中0名であった。<実物と画面上のAB課題での反応の対応>課題2の1回目において探索行動を示さなかった3名の課題1での段階は1、2、3が1人ずつであった。課題2の1回目で失敗した乳児および1回目で成功したが2回目で失敗(A not Bエラー)した乳児12名の課題1での段階は1、2、3、4がそれぞれ3、3、4、2名であった。課題2で2回とも成功した乳児5名の課題1での段階は1、2、3、4、5がそれぞれ1、0、1、1、2名であった。 考察:先行研究で見られた画面上のオブジェクトに対する明白な把握行動は観察されなかった。一方で課題2での成績に対応して画面上の事象に対する反応にも変化が見られた。このことから9ヶ月児において何らかの形で現実世界でのAB課題に用いられる知識が画面上の事象に対しても利用されていると考えられる。しかし、把握行動が見られなかったことから、両者を完全に混同して反応している可能性は低く、何らかの区別をした上で適用していると思われる。このことはPierroutsakos & Troseth(2003)が提案した、この時期の乳児が映像を現実と区別しながら両者にどのような関係があるかを学習している途上にあるという説を支持している。
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Research Products
(1 results)