2002 Fiscal Year Annual Research Report
島弧下マントルに含まれる流体から,沈み込み帯の物質循環系を探る
Project/Area Number |
02J07485
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 順司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 沈み込み帯 / マントル / 揮発性物質 / 流体包有物 / マントル捕獲岩 / 希ガス / 顕微ラマン分光分析 / 同位体 |
Research Abstract |
沈み込み帯の三次元的な物質構造と物質循環系を解き明かすため,マントル起源物質に適用できる超高精度の地質圧力計の開発に挑んだ.現在までの研究成果により,マントル構成鉱物に含まれる流体の密度と相図,輝石温度計を組み合わせることによって,流体の平衡圧力を見積もられることが確認できた.しかし,マントル鉱物に含まれる流体の密度には鉱物種に依存した系統的な差違が確認でき,鉱物の二次的な変形が影響を及ぼしている可能性が考えられる.そこで流動学的な計算を行うため,高温・高圧下での天然マントル構成鉱物の弾性・塑性変形強度をSPring8で測定した.現在,データの解析中であるが,この結果を用いて鉱物変形の圧力計への影響を見積もり,当手法を上部マントル物質に適用できる超高精度の地質圧力計として確立することを目指している. 上述の地質圧力計を実際に天然の試料に適用させるため,中国各地でマントル起源の捕獲岩を採取した.試料採取は主に山東省と遼寧省で行った.若干風化を被った試料もあったが,概ね予定通り尖晶石を含むマントル捕獲岩(レルゾライト)を採取することに成功した.現在,薄片を作製し,流体包有物の同定を進めているところである. 他に,予定していたパルス型レーザー光発振装置を用いた局所ガス抽出システムの開発も行った.一般的に,マントル構成鉱物には複数種の流体包有物が存在し,且つそれぞれが異なった起源や来歴を有すると考えられるため,流体包有物中の希ガスの同位体組成を個々に分析する技術が要請される.そこで赤外レーザー光を赤外光対応高倍率対物レンズによって数ミクロン径まで絞り,真空中で流体包有物を個々に撃ち抜くことに挑んだ.実際に超高真空に封入したマントル起源鉱物を10ミクロンのスポット径で掘削することに成功し,流体包有物一つ一つからガスを抽出することを可能にした.
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[Publications] Glasby G.P.: "Kuroko and hydrocarbon deposits from northern Honshu, Japan."Resource Geology. (印刷中).
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[Publications] Yamamoto J.: "Fossil pressures of fluid in clusions in mantle xenoliths exhibiting rheology of mantle minerals"Earth and Planetary Science Letters. 198. 511-519 (2002)