2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07512
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 健太郎 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 外来種 / ニジマス / ブラウントラウト / 種間競争 / 在来種 / イワナ |
Research Abstract |
ニジマスとブラウンマスが在来のイワナの個体数に与える影響について、回帰法とアイソダール分析という統計的手法を用いて調べた。野外調査は、2003年7月に北海道南部に位置する戸切地川において行った。本河川に生息するブラウンマスは約10年前に、ニジマスは約5年前に釣り人により放流されたものである。調査区として、上磯ダム湖から約8km上流にある砂防堰堤までの区間において、それぞれ瀬と淵を1つずつ含む25のリーチを設定した。調査区全体の生息密度は、イワナ、ブラウンマス、ニジマスの順に高かった。3種ともに淵の方が瀬よりも生息密度が高かった。2002年の結果と比較すると、ニジマスとブラウンマスは有意な増加傾向を示したが、イワナは有意な減少傾向を示した。特に、ニジマスは2002年に淵でしか確認されなかったが、2003年では瀬でも確認された。競争関係を定量化するため、回帰法とアイソダール分析を用いて統計的解析を行なった結果、ニジマスとイワナはハビタットをめぐる競争関係にあり、ニジマスが淵に侵入することでイワナが瀬に追い遣られていることが明らかとなった。一方、ブラウンマスとイワナはハビタットをめぐる競争関係にはないが、ブラウンマスがイワナの生息区間に侵入することで、イワナの密度が生息区間全体から減少することが明らかとなった。これは、ニジマスとイワナの主要な餌生物が同じ陸棲昆虫であるのに対し、ブラウンマスは底棲動物や魚類を比較的多く採餌しているためであると考えられた。つまり、ニジマスはイワナの採餌ハビタットを減少させているのに対し、ブラウンマスはイワナ稚魚の捕食等によりイワナ個体数を直接的に減少されていると考えられた。得られた成果は、昨年度のデータと統合することにより、投稿論文として取りまとめを行った。論文は、イギリス生態学会の機関誌であるJournal of Applied Ecology誌に受理された。
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[Publications] Kentaro Morita, Jun-ichi Tsuboi, Hiroyuki Matsuda: "The impact of exotic salmonids on native charr in a Japanese stream"Journal of Applied Ecology. 印刷中. (2004)
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[Publications] 森田健太郎, 岸大弼, 坪井潤一, 森田晶子, 新井崇臣: "北海道知床半島の小河川に生息するニジマスとブラウンマス"知床博物館研究報告. 24. 17-26 (2003)
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[Publications] 坪井潤一, 森田健太郎: "野生化したニジマスと天然イワナの釣られやすさの比較"日本水産学会誌. 印刷中. (2004)
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[Publications] 森田健太郎, 山本祥一郎: "ダム構築による河川分断化がもたらすもの-川は森と海をつなぐ道- サケ・マスの生態と進化(前川光司編)"文一総合出版(印刷中). (2004)