2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07722
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鍜島 麻理子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 熱ゆらぎ / レーザー干渉計 / 機械損失 / 精密計測 / ゴム |
Research Abstract |
力学系の熱ゆらぎは、特にメカニカルプローブを用いた精密計測における雑音として扱われ、低減するための試みが行われてきた。しかし、力学系の熱ゆらぎのパワースペクトルは、揺動散逸定理によって、物質の内部状態を反映する機械損失と結び付けられているので、原理的には熱ゆらぎを測定することにより機械損失を知ることができる。そこで、力学系の熱ゆらぎ自体を、測定対象の内部状態を知ることに利用できると考えた。 ただし、揺動散逸定理は理論的には確立された定理であるが、実験的に検証した例は、非常に限られた金属などの系における数少ない例があるだけである。また、具体的な機械損失機構と熱ゆらぎとを結びつけることは、簡単ではない。 そこで、高感度レーザー干渉計を用いて、熱ゆらぎのパワースペクトルと機械損失の周波数特性を精密に測定した。直接測定した熱ゆらぎのパワースペクトルと機械損失から計算した熱ゆらぎのパワースペクトルを比較したところ、両者が広い周波数範囲で一致した。これにより、揺動散逸定理を実験で検証することができた。このようにして、揺動散逸定理の成立を、実際の力学系において検証したことにより、力学系の熱ゆらぎを、単なる雑音としてだけではなく、精密な物性測定における基準として用いることができることを示すことができた。 また、今回、機械損失について、金属などより多くの考察がなされているゴムを試料に用いた。これにより、力学損失機構と熱ゆらぎについて、今までより深い考察を得ることができる。
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