2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 靖二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2) (50453551)
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Keywords | 宗教学 / 思想史 / 宗教史 / キリスト教 / 明治 / 近代 / 日本 / 仏教 |
Research Abstract |
本年度の研究実績としては、まず明治十年代中葉におけるキリスト教徒と仏教徒の間に交わされた議論を事例として、そこに現れる望ましい「宗教」の位相を捉えることを試みた。具体的な事例としてはキリスト教雑誌である『六合雑誌』と仏教雑誌である『明教新誌』を取り上げ、そこに議論がかみ合わない論争を見ることができる一方で、仏教をphilosophyやreligionとして捉えようとする試みをも見出すことができた。そしてこれを特定の宗教伝統に携わる者達に「宗教」という範疇概念が共有されるようになっていく過渡期としての側面を見ることができると結論づけた。これについては2002年度の宗教学会の学会大会において発表を行ったが、更にその後の京都への資料調査において得られた文献への考察を加えて来年度に論文にまとめる予定である。 また明治末期における「宗教」の内面化の傾向についての考察を並行して進め、キリスト教雑誌である『宗教及び文藝』の性格を、同時代的な「宗教」の位置付けと関連して論じた。同誌の性格については、同時期における種々の修養運動のような個人の内面を取り扱う複合的な運動と並行的に捉えることができる一方で、教会という共同体の存在と関連して神学の教育に力が入れられていることをその特色として指摘した。これは『東京大学宗教学年報』に論文として発表した。 更に宗教をめぐる思想史の方法論について、日本キリスト教思想史に業績のある武田清子の研究を考察し、武田が方法論のレベルで前提している「宗教」という概念について論じた。これは『思想史研究』に論文として発表した。
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