2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08350
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 耕治 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 硼化物 / 少数キャリア / 強磁性 / 表面 |
Research Abstract |
前年度までの研究により、機械的研磨を単結晶試料に対して行った場合には磁化の減少が確認されている。これはローレンツ顕微鏡による磁気モーメントの分布観察からも確認されており、試料表面がこの系において観測されている強磁性発現に関与していることが伺われる。しかし、このモーメントがアルカリ土類ヘキサボライド自身の本質的な強磁性であるのか、磁性不純物であるのかに関しては疑問が残る。そこでまず、体積に対する表面積の比が大きな多結晶試料(CaB_6)に対して化学的エッチング(塩酸、硝酸)を行い、そのas-grown表面から強磁性発現に寄与している可能性のあるミクロンオーダーの層を除去し、表面処理の前後における磁化測定の比較を行った。CaB_6は塩酸に不溶、硝酸に対しては可溶である為、表面部分のCaB_6自身が歪み等により強磁性モーメントを発生している場合、硝酸によるエッチング処理に対してのみ、そのモル磁化を減少させることが予測される。しかし、塩酸、硝酸のいずれの酸によるエッチングにおいてもモル磁化の減少が観測されるという結果が得られた。このことは、強磁性モーメントを出している物質としてCaB_6以外のもの(酸に可溶)が含まれていることを示唆している。同様の多結晶に対する実験はMatsubayashiら(Nature 420,143(2002))によっても行われており、キュリー温度からFeB等が強磁性の原因として挙げられている。この点に関して確認する為、蛍光X線による定性分析を試みたところ、Feの含有が確認され、また、SEMの反射電子像の観測でも多結晶試料全体に渡る重元素の分布が見られ、上記の報告との一致する結果が得られた。また、この結果を受け、試料の原料の純度を高めて単結晶試料を作成するとYoungら(Nature 397,412(1999))の報告の1/10以下のモーメントしか示さないサンプルが出来る場合があることを確認した。
|