1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03041020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 彰 東京大学, 経済学部, 教授 (10012973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 徹 北海道大学, 経済学部, 助教授 (30227839)
矢坂 雅充 東京大学, 経済学部, 助教授 (90191098)
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Keywords | フィリピン / 農地改革 / 非政府組織 / 農民組織 / トライパ-ト・プロジェクト / 土地なし農業労働者層 / プロシェントハン / サポ-ト・サ-ビス |
Research Abstract |
農民との対話によって進められたこの調査をとおして、フィリピンの農地改革の進展を妨げる諸要因があきらかになった。実際の農地改革は、地主が耕作不適格地か低級地を「自主的に」定められた有利な条件で売却するものか抵当流れの土地に限られ、実質的な進展はみられなかった。しかし、農地改革省、非政府組織、農民組織の三者が一体となり、農民へのサポ-ト充実をはかり改革を推し進めようとするトライパ-ド・プロジェクトと呼ばれる動きが観察された。これは従前にはなかった新しい動向として注目される。村落レベルでは、米作農村、ココナッツと砂糖黍の農園の調査を行った。比較的に改革が進んできた中部ルソン地方の米作農村調査では、小作農の自作化のなかで土地なし農業労働者層が取り残され、農村に新たな階層分化が生じていることがあきらかになった。小作農は自作農になるや不耕作農となり、プロシェントハンと呼ばれる擬小作契約によって労働をもっぱら土地なし農業労働者層に依存することになったのである。ココナッツと砂糖黍の農園は今回はじめて改革の対象となったプランテ-ションの事例である。しかし、上述のように、それはおよそ本質的な改革とはいえないものであった。非受益者へのサポ-トが不備であり、改革の対象となる受益者の候補基準が明確ではないことも、農民に改革への不信感を増大させている。受益農民もサポ-ト・サ-ビスが十分でないために、未だ家族経営型の農村工業に生活を依存せざるをえない状況である。将来的には、米作農村同様、受益者=非受益者間の経済格差が拡大し、新たな階級間の摩擦が生じることも予測される。しかがって、今後の農地改革を考える上では、政府の地主に対する強力な姿勢とともに、非受益者を含めた農民へのサポ-トが重要なポイントとなっている。その意味で、官民一体によるトライパ-ド・プロジェクトには大きな期待が寄せられている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 高橋 彰: "「フィリピン総合農地改革の展開と限界」" 『経済学論集』(東京大学経済学部). 58ー2. (1992)
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[Publications] 矢坂 雅充: "「中部ルソンにおける農地改革と農業生産構造の変化」" 『経済学論集』(東京大学経済学部). 58ー2. (1992)
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[Publications] 中西 徹: "「フィリピンの農地改革に思う」" 『エコフォ-ラム』(統計研究会). 10ー4. (1992)
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[Publications] 中西 徹: "“Hayami Yujiro et al.,Toward an Alternative Land Reform Paradigm:A Philipplne Perspective"(Book Reviev)" Developing Economies(Institute of Developing Economies). 30. (1992)
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[Publications] 中西 徹: "「ココナッツ農園の農地改革と農村社会の変容」" 『経済学論集』(東京大学経済学部). 58ー3. (1992)
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[Publications] 高橋 彰(東京大学社会科学研究所編): "「フィリピンー混迷と希求とー」『現代日本社会(3)国際比較(2)』" 東京大学出版会, 411-443 (1992)