1992 Fiscal Year Annual Research Report
興奮性アミノ酸の情報伝達機構とその高次神経機能における役割
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03102005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 重忠 京都大学, 医学部, 教授 (20089105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重本 隆一 京都大学, 医学部, 助手 (20221294)
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Keywords | グルタミン酸受容体 / 遺伝子工学 / イオン・チャンネル / 細胞内情報伝達系 / 発現分布 / 特異的アゴニスト / NMDA受容体 / メタボトロピック受容体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中枢神経系の主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容機構を明らかにし、興奮性アミノ酸の高次脳・神経機能における役割と神経細胞死の機構を明らかにすることである。本年度は以下の研究成果を得た。 1.NMDA受容体(NMDAR1)を初めてクローン化する事に成功し、NMDAR1は、本受容体の全ての性質(アゴニスト、アンタゴニストの特異性、Ca^<2+>の透過性、Mg^<2+>の阻害、グリシンによる活性化、チャンネル・ブロッカーによる阻害)を持つものである事を明らかにした。2.NMDAR2A-NMDAR2Dと命名した4種類のNMDA受容体サブユニットをクローン化する事に成功し、これらサブユニットは、NMDAR1とヘテロマーを形成し、NMDAR1を顕著に活性化し、又NMDA受容体の性質に多様性を与えるものであることを示した。3.NMDAR1mRNAは、ほぼ全ての神経細胞に発現しているが、一方NMDAR2の各mRNAは、それぞれ、一部異なる発現分布を示すことを明らかにした。4.NMDAR1の第2膜貫通部位のアミノ酸を置換することによって、この部位に存在するアスパラジンがリングを形成し、NMDA受容体に特徴的なCa^<2+>の透過性、Mg^<2+>及びチャンネル・ブロッカーの阻害に重要な役割を果たしていることを示した。5.mGluRのクローニングを進め、mGluR1-mGluR6と命名した6種類が存在することを明らかにした。6.個々のmGluRを動物細胞で発現し、構造、細胞内情報系、アゴニストの特異性から、mGluRは、mGluR1/mGluR5、mGluR2/mGluR3とmGluR4/mGluR6の3群に分類されることを明らかにした。7.RNAの発現は、相互に異なるものであることを示した。8.(carboxycyclopropyl)glycineは、mGluRに特異的なアゴニストとして作用し、中でもmGluR2に、強い親和性を示すものである事を示した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Shigetada Nakanishi: "Molecular diversity of glutamate receptors and implications for brain function." Science. 258. 597-603 (1992)
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[Publications] Yasuto Tanabe: "A family of metabotropic glutamate receptors." Neuron. 8. 169-179 (1992)
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[Publications] Takaaki Abe: "Molecular characterization of a novel metabotropic glutamate receptor mGluR5 coupled to inositol phosphate/Ca^<2+> signal transduction." The Journal of Biological Chemistry. 267. 13361-13368 (1992)
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[Publications] Yasunori Hayashi: "Agonist analysis of 2-(carboxycyclopropyl) glycine isomers for cloned metabotropic glutamate receptor subtypes expressed in Chinese hamster ovary cells." British Journal of Pharmacology. 107. 539-543 (1992)
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[Publications] Ichiro Aramori: "Signal transduction and pharmacological characteristics of a metabotropic glutamate receptor mGluR1 in transfected Chinese hamster ovary cells." Neuron. 8. 757-765 (1992)
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[Publications] Yasumasa Bessho: "Glutamate and quisqualate regulate expression of metabotropic glutamate receptor mRNA in cultured cerebellar granule cells." Journal of Neurochemistry. 60. 253-259 (1993)
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[Publications] 中西 重忠: "脳のはたらきー回路網・遺伝子・機能分子をめぐってー(3章分担:神経伝達の受容機構ーグルタミン酸受容体とその受容機構を中心にー)" 講談社サイエンティフィク(伊藤正男/編), 30 (1992)