1992 Fiscal Year Annual Research Report
巨大分子集合体プロテアソームの構造と細胞生物学的機能に関する研究
Project/Area Number |
03102006
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
市原 明 徳島大学, 酵素科学研究センター, 教授 (40035374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 啓二 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助手 (10108871)
吉村 哲郎 徳島大学, 酵素科学研究センター, 助教授 (30035472)
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Keywords | プロテアソーム / 多機能プロテアーゼ複合体 / 遺伝子転写制御機構 / 細胞内蛋白質分解機構 / 抗原プロセシング・提示 / 分子適合 / エネルギー依存性分子識別 / 蛋白質超分子複合体 |
Research Abstract |
プロテアソームの分子構造と生理機能に関する本年度の研究成果として以下の結果を得た。ヒト20Sプロテアソームの遺伝子構造と転写制御機構の研究:我々は巨大な多成分複合体としてのプロテアソームを構成する遺伝子群が複数の染色体の遺伝子座に独立して存在することを明かにすると共に、主要成分HC3とHC5の遺伝子構造と転写調節領域の機能について解析した。HC3遺伝子とHC5遺伝子の遺伝子サイズは全長約15kbと類似しているが、エクソンの構成及びイントロンの介在様式は大きく異なっていた。両遺伝子の5'上流領域にはTATA-boxやCAT-boxは検出されなかったが、2個のGC-boxが存在し、これらが転写のプロモーターとして作用していることから、両遺伝子ががハウスキーピング型遺伝子であることが示唆された。また、両遺伝子の5'上流領域には転写を負に制御するcis-actingなエレメントが同定されたことから、両遺伝子の転写調節には類似した協調発現機構の存在する可能性が示唆された。 プロテアソームの抗原プロセッシング酵素としての研究:プロテアソームの遺伝子発現、分子組成および蛋白質機能がガンマ型インターフェロンで大きく変動することを発見し、プロテアソームが免疫応答機構に密接に関係することが示唆された。本研究から、我々は分子構成の変化による多様性機能の獲得現象を分子適応と考える新しい概念を提案した。 ATP依存性プロテアーゼとしての30Sプロテアソームの物理構造解析の研究:プロテアソームは同一分子内に複数の触媒活性部位をもつ多機能性の蛋白質分解酵素複合体で沈降係数20S、分子量75万の円筒型粒子である。最近、我々は多数の制御蛋白質群がこの20Sプロテアソームに可逆的に会合し巨大な分子集合体を形成すること、そしてこの複合体がユビキチン化されたcMosやオルニチン脱炭酸酵素をエネルギー依存的に分解することを証明した。しかしこの新しい複合体の分子的性質に関する報告は皆無であり、本年度に我々はこの酵素の新しい精製方法を確立すると共にその構造特性を検討した。精製酵素を酢酸ウランで負染色した後電子顕微鏡で観察すると、20Sプロテアソームの両端に類似の大きな蛋白質構造体が会合したダンベル型粒子であった。また精製酵素の流体力学的性質を沈降速度法及び準弾性光散乱法で解析した結果、沈降係数は約30S、拡散係数は1.38x10^<-7>cm^2/secであり、分子量は約200万と推定された。本酵素は総数50個の異型サブユニット群から構成されており、本研究により、このATP依存型のプロテアソームは細胞内で非常に複雑な分子構成をもつ巨大な蛋白質超分子複合体であるこが判明した。
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[Publications] Lee,D.H.: "PRS3 encoding an essential subunit of yeast proteasomes homologues to mammalian proteasome subunit C5." Biochem.Biophys.Res.Commun.182. 452-460 (1992)
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[Publications] Aki,M.: "Rat Proteasome subunit RC1 gene encoding a homologue of RING10 located on the human MHC Class II region." FEBS Lett.301. 65-68 (1992)
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[Publications] Kanayama,H.: "Demonstration that a human 26S proteolytic complex consists of a proteasome and multiple associated protein components and hydrolyzes ATP and ubiquitin-ligated proteins by a closely linked mechanism." Eur.J.Biochem.206. 567-578 (1992)
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[Publications] Murakami,Y.: "Antizyme,a protein induced by polymines,accelerates the degradation of ornithine decarboxylase in Chinese-hamster ovary-cell extracts." Biochem.J.283. 661-664 (1992)
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[Publications] Tamura,T.: "Molecular cloning of cDNAs for rat proteasomes:Deduced primary structures of four other subunits." J.Biochem.112. 530-534 (1992)
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[Publications] Shimbara,N.: "Regulations of gene expression of proteasomes(multi-protease complexes)during growth and differeniation of human hematopoietic cells." J.Biol.Chem. 267. 18100-18109 (1992)
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[Publications] Ozaki,M.: "Purification and intial characterization of proteasome from the higher plant,Spinacia oleracea" J.Biol.Chem.267. 21678-21684 (1992)
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[Publications] Murakami,Y.: "Ornithine decarboxylase,without ubiquitination,is degraded by the 26S proteasome." Nature. 360. 597-599 (1992)
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[Publications] Ugai,S.: "Isolation and characterization of the 26S proteasome complex catalyzing ATP-dependent dreakdown of ubiquitin-ligated proteins from rat liver." J.Biochem. (1993)
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[Publications] Yoshimura,T.: "Molecular characterization ofthe ¨26S¨ proteaome complex from rat liver." EMBO J.(1993)
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[Publications] Tanaka,K.: "Proteasomes:protein and gene stuructures" New Biologist. 4. 173-187 (1992)
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[Publications] Ichihara,A.: "Regulation of expression in developing and transformed cells." Adv.Enz.Regul.(1993)
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[Publications] 田中 啓二: "真核生物の新しいATP依存性プロテアーゼ複合対:プロテアソームと制御蛋白質の分子集合によるユビキチン化蛋白質の分解" 蛋白質核酸酵素. 36. 2494-2505 (1992)
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[Publications] 田中 啓二: "BioMedica" プロテアソームの発現. 6. 604-610 (1992)
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[Publications] 田中 啓二: "プロテアソームの分子構造と生理機能" 生物物理. 32. 200-206 (1992)
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[Publications] 田村 具博: "プロテアソームと抗原提示" 化学と生物. 30. 702-713 (1992)
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[Publications] 田中 啓二: "生体超分子システム:蛋白質分解システム" 蛋白質核酸酵素. (1993)
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[Publications] 田中 啓二: "蛋白質分解酵素と細胞周期制御" 蛋白質核酸酵素. (1993)
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[Publications] Tanka,K.: "Biological Functions of Proteases and Inhibitors:The proteasome and ubiquitin-dependent proteolysis." Japan Scientific Societies Press,Tokyo., (1993)
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[Publications] 田中 啓二: "生物化学実験法:蛋白質分会酵素 高分子量多機能プロテアーゼ「プロテアソーム」" 学会出版センター, (1993)
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[Publications] 田村 具博: "プロテアソームと蛋白質分解 生物薬科実験講座:オルガネラ" 廣川書店, (1993)
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[Publications] 田村 具博: "高分子量多機能プロテアーゼ「プロテアソーム」"プロテアーゼ解そのインヒビトター"" メジカルビュー社, (1993)
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[Publications] 田中 啓二: "多機能性高分子プロテアーゼ「プロテアソーム」タンパク質化学講座:ヒドロラーゼ" 廣川書店, (1993)
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[Publications] 田中 啓二: "抗原のプロッセシングの抗原提示 現代化学増刊「プロテアーゼ研究の新しい展開」" 東京化学同人, (1993)