1991 Fiscal Year Annual Research Report
肺小細胞癌の悪性化のメカニズムの解明とその対策(Lーmyc癌遺伝子の異常と悪性化)
Project/Area Number |
03152073
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷尾 吉郎 大阪大学, 医学部, 助手 (50197521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川瀬 一郎 大阪大学, 医学部, 助手 (10161324)
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Keywords | 肺小細胞癌培養株 / Lーmyc癌遺伝子 / 薬剤・放射線耐性 / HLAーclassI抗原 / インタ-フェロン / モノクロ-ナル抗体 |
Research Abstract |
1.一人の患者由来の二種類の肺小細胞癌培養株、未治療株OS2と再発株OS2ーRは、神経内分泌学的特徴と形態学的特徴は似通っていたが、種々の点で異なっていることが明かとなった。:(1)in vitro,in vivoの増殖能はOS2ーRで増していた。(2)ヌ-ドマウス静注実験で、OS2ーRの方がリンパ節等に転移しやすかった。(3)肺小細胞癌の自己増殖因子であるGRPは、OS2ーRがOS2の約1/3であった。(4)染色体分析では、3p,13qの欠失、そして17のモノソミ-は共通していたが、OS2ーRには多くのdouble minutesが認められた。(5)サザン法によるmyc族(cー,Nー,Lーmyc)癌遺伝子の検討では、OS2ーRにLーmycの著明な増幅とcーmycの再構成が認められた。(6)OS2ーRのin vitro継代中にプラスチック付着性の異型株OS2ーRAが分離されたが、Lーmycの増幅に加え再構成が認められた。(7)myc族癌遺伝子の発現をドットブロット法で検討すると、OS2ーR,OS2ーRAには著明なLーmycの発現増強が認められたが、多剤耐性遺伝子mdr1及び放射線抵抗性と関係があると言われているcーraf癌遺伝子の発現増強は検出できなかった。 2.OS2,OS2ーR,OS2ーRAを免疫学的に検討した。(1)いずれもHLAーclass I抗原が減少していたが、インタ-フェロン処理によって発現増強された。(2)HLAーclass I抗原と逆相関してNK感受性が変動することが明らかにされた。(3)発現増強したclass I抗原はアロキラ-T細胞を誘導することが示された。 3.肺小細胞癌培養株OS1でマウスを免疫して作成したモノクロ-ナル抗体ITKー2,ITKー3は、いずれも肺小細胞癌に選択的に発現しているNーCAM抗原を認識するが、両者を同時に作成させると反応が増強することが明かとなった。 4.考察:ある種の肺小細胞癌(例えば典型的なclassic型)の悪性化のメカニズムには、Lーmycの増幅、発現増強が関与している可能性が強く示唆されたが、その耐性克服には免疫療法が有効かもしれない。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Saito,S.: "Two monoclonal antibodies against small-cell lung cancer show existence of synergism in binding." Cancer Immunol.Immunother.33. 165-170 (1991)
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[Publications] Ikeda,T.: "Characterization and purification of an immunosuppressive factor produced by a small cell lung cancer cell line." Jpn.J.Cancer Res.82. 332-338 (1991)
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[Publications] 谷尾 吉郎: "肺小細胞癌の悪性化におけるLーmyc癌遺伝子の関与" 医学のあゆみ. 158. 353 (1991)