1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03201214
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
泉谷 恭男 信州大学, 工学部, 助教授 (60092863)
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Keywords | 強震動予測 / 地盤震動卓越方向 / 地震動主軸 / 散乱波の影響 / 震源の影響 |
Research Abstract |
本研究の目的は地震動の卓越方向について実際の強震記録を解析することによって調べ,地震の震源モデルから期待される震動方向がどの程度反映されているものかについて検討することである。地震動の卓越方向は地震動主軸の概念によって表現して整理した。断層モデルに基づいてS波の理論強震動を計算してその主軸について調べると,その方向は断層モデル上で与えた点震源のメカニズム解から期待される振動方向を忠実に反映し,中間主軸と最大主軸の大きさの比は非常に小さい。これに対して実際の強震記録では中間主軸と最大主軸の比はかなり大きい。比較的狭い範囲に密に地震計を配置したアレ-内観測点間で記録の全長についての最大主軸方向を比較すると,2Hz以下の低周波数成分については各観測点とも最大主軸方向は揃っているが8〜10Hzの高周波数成分では観測点毎にかなり違った方向を示す。ところが一見バラバラに見える高周波数成分の最大主軸方向をいろいろな地震の場合について比較してみると,定性的にではあるが,よく似た空間的パタ-ンを示す。このことは観測点近傍のごく表層の性質が高周波数成分に強く影響しており,観測点固有の搖れ易い方向が存在することを暗示している。以上のことにより,直達S波として震源の情報を強く反映していると通常考えられている部分でも,散乱波等がかなり混入していることが分かった。また,最大主軸方向の時間的変化を調べると,震源メカニズムの影響は直達S波到着後のごく短い時間内にのみ現れており,特に高周波数成分波の震動卓越方向については,震源メカニズムよりもむしろ観測点のごく近傍での散乱波の影響が非常に大きいものであることが分かった。半経験的強震動予測に際しては,必ずしも震源メカニズムのよく似た地震記録を用いることにこだわらず,観測点の個性を反映した統計的グリ-ン関数を数学的に合成する等の方向が考えられる。
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