1991 Fiscal Year Annual Research Report
肺胞マクロファ-ジを介して起きる粒子状大気汚染物質の生体影響の病態生理学的研究
Project/Area Number |
03202257
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
橋本 正史 大阪府立公衆衛生研究所, 公害衛生室・公害衛生室長 (10028699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 孝江 大阪府公立衆衛生研究所, 公害衛生室, 研究員
大山 正幸 大阪府立公衆衛生研究所, 公害衛生室, 研究員 (40175253)
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Keywords | マクロファ-ジ / アスベスト / 活性酸素 / 肺水腫 / ホスホリパ-ゼA_2 |
Research Abstract |
アスベストの発癌性は疫学調査および動物実験で認められるが、in vitroの変異原性は殆ど認められない。この事実はアスベストの生体影響が生体内での反応を介して起きることを示唆するが、我々はこの反応の相手をマクロファ-ジ(Mφ)と考え、以下の実験を行った。実験1:クリソタイル粒子を繊維状のものと粒状のものに分け、それを更にマウス血清でオプソニン化したもの(O)としなかったもの(N)に分けて、(1)in vitroのMφのス-パ-オキサイドアニオン(O_2)産生、(2)in vivoで粒子をマウス気管内に投与したときの肺重量および肺毛細血管透過性の増加とこの影響に対するO_2消去酵素(SOD)投与の効果、をみた。実験2:粒子で刺激したときのMφの細胞応答をMφ膜内酵素であるホスホリパ-ゼA_2の活性阻害剤を投与したときの(1)の反応でみた。実験3:0粒子に吸着している可能性がある生体物質(コレステロ-ル、リン脂質、IgG等)の(1)の反応に対する影響をみた。その結果、以下のことが判明した。(1)クリソタイル粒子の(1)(2)に対する影響には粒子形状依存性がある。(2)(1)の反応時間経過には、N粒子で刺激したときにみられる反応開始後40〜50分でピ-クに達してその後速やかに減衰する型と、O粒子で刺激したときにみられるピ-クが約120分後でその後も持続的産生がみられる型とがある。この反応型を決定する因子に粒子に吸着する物質の電荷がある。(3)粒子表面の疎水性が(1)の反応を強める。粒子に吸着したIgGはMφのFcリセプタ-と結合し(1)を増強する。(4)Mφ膜内のホスホリパ-ゼA_2の活性化を介して(1)の反応が起きる。(5)オプソニン化粒子に吸着している脂溶性物質をマクロファ-ジに投与すると(1)の反応が抑制される。(6)(2)の肺重量の増加は肺毛細血管透過性の亢進に起因し、O_2はこの直接の原因物質ではない。
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