1991 Fiscal Year Annual Research Report
光エネルギ-の化学的変換のための新規可逆反応系の開発
Project/Area Number |
03203238
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 定雄 京都大学, 工学部, 助手 (30135537)
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Keywords | 光エネルギ- / 歪エネルギ- / 高歪化合物 / 原子価異性 / 化学励起 / 化学発光 |
Research Abstract |
本年度では初年度で得た、熱異性化の過程で化学励起を起こす高歪化合物の分子設計の指針に基づいて高歪原子価異性系の設計・合成を行なった。特に、化学励起を発光現象に結びつける目的で、生成物が蛍光を発し、しかも、異性化反応の遷移状態から生成物の励起一重項項状態への遷移がエネルギ-的に可能な系の探索を行ない、デュワ-ベンゾフェノン(1)、7,8,9ートリーtーブチルー1,4ーデュワ-ー5,12ーナフタセンキノン(2)、アクリジルデュワ-安息香酸メチル(3)などを合成し、それらの熱的芳香化反応を検討した。いずれの化合物も対応する生成物の励起一重項を与えるに十分な反応熱を示した。1の熱異性化をトランスースチルベン存在下で行なったところシスースチルベンの生成が認められた。シスースチルベンの生成量から、化学励起は0.6%程度と見積もられた。1からの生成物であるベンゾフェノンでは項問交差が速いのでこの値が励起状態生成の総量と考えられるが、励起一重項の生成量を決定するには至っていない。2からの生成物である7,8,9ートリーtーブチルー5,12ーナフタセンキノン(4)の励起一重項はππ^*性であり蛍光を発するので、励起一重項生成が直接観測される可能性があるが、2の熱異性化において4の蛍光の検出には至らなかった。しかし、この反応には、熱的には生成し得ない、ナフタセンキノバレン(5)の生成を伴った。5は4の光照射で得られる。5の光化学的生成は三重項消光剤の影響を受けない。一方、4の蛍光はN,Nージメチルアニリンで消光され、同じ条件で5の生成も消光されることより、5は4の励起一重項からの生成物と考えられ、2の熱的芳香化反応に4の励起一重項を生成する化学励起過程が伴っていることが分かった。3の熱反応では、化学励起は起こらない。これは、デュワ-安息香酸部位とアクリジル基が直交しているためと考えている。
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[Publications] Sadao Miki: "Chemiexcitation of Naphthacenequinone Derivative via the Thermal Cycloreversion of the Corresponding hemiーDewarーanthraquinone" Chemistry Letters. 65-68 (1992)
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[Publications] Sadao Miki: "Novel Naphthalene Derivatives Undergoing Thermal Valence Isomerization to hemiーDewarーnaphthalene" Chemistry Letters. 41-44 (1992)
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[Publications] Sadao Miki: "Chemiexcitation of an Anthraquinone Derivative in the Thermal Cycloreversion of a Dewaranthraquinone Derivative" Journal of the Physical Organic Chemistry. 5. (1992)
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[Publications] Sadao,Miki: "Synthesis and Property of[6]ー1,4ーCyclophaneanthraquinone:A Novel Anthraquinone Derivative Undergoing Photovalence Isomerization" Tetrahedron Letters. 33. (1992)