1991 Fiscal Year Annual Research Report
琉球列島における先史時代人の生計維持戦略ー珊瑚礁海域の島嶼環境における資料利用に関する生態人類学的研究ー
Project/Area Number |
03209107
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
武田 淳 琉球大学, 医学部, 助手 (20045066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐熊 正史 鹿児島大学, 歯学部, 助手 (70136886)
佐藤 弘明 琉球大学, 医学部, 助手 (40101472)
口蔵 幸雄 岐阜大学, 教養部, 助教授 (10153298)
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Keywords | 熱帯・亜熱帯地域における食物獲得戦略 / 琉球列島における先史時代人の生計維持機構 / 先史時代人の食物資源利用 / 島嶼生態系における採捕技術と効率 / サンゴ礁海域における漁撈民の適応戦略 / 熱帯降雨林への進出と適応戦略 / 採捕活動の進化史的意義の検討 / モンゴロイドの拡散と移住 |
Research Abstract |
遺跡における遺物から先史時代人のとっては海産食物資源、とくに海岸および礁池の資源が重要であった。当時、魚垣、銛などの簡単な道具を使う採集方法が採られていた。例えば、採集活動には浅海でのちょっとした潜水をともなうもの、昼の潮干狩ばかりではなく、たいまつを使用する夜間のイザリ漁を想定した場合、魚類ではアイゴ、ブダイ、ミズダコやアナダコ、貝類ではチョウセンサザエ、マガキガイ、ヤコウガイなどの巻貝が海岸部で行われる採集活動による最も重要な食物資源と思われる。これらはいずれも海岸近くの浅瀬や礁池を棲息地とし、生態的特徴から採捕の容易な資源である。さらに列島全般に分布し、資源量も豊富であり、安定供給、供給量という点からも優れた食物資源であった。なお、個別的な採捕方法の詳細は、武田(印刷中)を参照されたい。陸生植物資源では、遺物からすると、動物ではリュウキュウイノシシがもっとも重要であったかと思われるが、捕獲が不安定という狩猟の一般的特性から安定した捕獲があったかどうかは疑問である。植物では現在の植生からすると、シイの実などの堅果類が考えられる。しかし、結実量に大きな年変動があり、これに大きく依存することはできなかったと思われる。また、現在、残っているシイの実の伝統的利用方法も補助的な利用に限られていて、大量利用の痕跡が見られない。植物では他に野生ヤマノイモが考えられるが、まだ十分資料が集積していない。しかし、東南アジアに住む現生狩猟採集民の調査からすれば、ヤムイモの役割をエネルギ-貢献度でみると、わずか3.3%にすぎず、狩猟漁労による野生動物性食物の貢献度のほうが、はるかに高い。また、ヤムイモをはじめとする野生植物性食物の積極的な利用は、農作物の利用が制限される時期の補助食物か農作物中心の食事に変化を与えるものに限られることからも生計維持戦略上重要な食物だったとは考えられない。
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Research Products
(19 results)
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[Publications] 武田 淳: "伊計島々民の漁撈活動" 昭和61年度文部省科研費・特定研究報告書「沖縄県地域住民の健康に関する保健学的総合研究」. 145-172 (1991)
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[Publications] 佐藤 弘明: "沖縄県北部農村住民の疾病対処に関する態度ーとくに家庭内治療に焦点を当ててー" 民族衛生. 57. 253-265 (1991)
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[Publications] Kuchikura,Y.: "Subsistence Activities,Food Use and Nutrition Amongthe Mountain Ok in Central New Guinea." Man and Culture in Oceania. 6. 113-137 (1991)
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[Publications] Kuchikura,Y.: "The Productibility and Adaptability of Diversified Foodーgetting system of Foothill Community in Papua New Guinea." Senri Ethnological Studies.
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[Publications] Kuchikura,Y.: "A Comparative Study of Subsistence patterns in Papua New Guinea." Man and Culture in Oceania. 7.
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[Publications] 佐熊 正史,他: "鹿児島県姶良郡吉松町鶴丸馬場他下式横穴出土の人骨" 吉松町埋蔵文化財発堀調査報告書. 2. 19-39 (1991)
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[Publications] 佐熊 正史,他: "市来町川上貝塚出土の縄文時代人骨について" 鹿児島考古. 25. 82-84 (1991)
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[Publications] 佐熊 正史: "ネパ-ルにおける歯科学術調査と歯科医療協力〈上〉ネパ-ル歯科学術調査隊の概要" 歯界展望. 78. 403-413 (1991)
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[Publications] 佐熊 正史: "ネパ-ルにおける歯科学術調査と歯科医療協力〈中〉口腔疾患の実態調査と治療協力" 歯界展望. 78. 677-688 (1991)
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[Publications] 佐熊 正史: "ネパ-ルにおける歯科学術調査と歯科医療協力〈下〉歯科人類学・咀嚼機能・食生態調査とまとめ" 歯界展望. 78. 929-941 (1991)
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[Publications] Sakuma,M.et.al.: "The Bushman Maxillary Canine of the Chewa Tribe in EastーCentral Africa." J.Anthro.Soci.Nippon. 99.
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[Publications] 佐藤 弘明,他: "与那城村における受診行動の分析" 昭和61年度文部省科研費・特定研究報告書「沖縄県地域住民の健康に関する保健学的総合研究」. 99-109 (1991)
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[Publications] 武田 淳: "アフリカのヒトと暮らし:食物獲得戦略を中心にして" Liberal Arts(札幌大学教養部教育研究). 6.
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[Publications] 武田 淳: "「ヒトの自然誌」" 平凡社, 602 (1991)
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[Publications] 武田 淳: "「地域文化の均質化」" 平凡社,
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[Publications] 武田 淳: "イノ-の民俗学" 三一書房,
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[Publications] Takeda,J.: "Food and Nutrition in The Tropical Rain Forest" Parthenon Publishing,
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[Publications] Sato,H.: "Food and Nutrition in the Tropical Rain Forest" Parthenon Publishing,
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[Publications] 佐熊 正史: "地域文化の均質化" 平凡社,