1991 Fiscal Year Annual Research Report
モリブデンあるいはタングステン‐ホスフィン複合系を用いた有機合成
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03215211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
干鯛 眞信 東京大学, 工学部, 教授 (60011011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 洋一 東京大学, 工学部, 助手 (40193263)
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Keywords | ジアゾアルカン錯体 / アルケニルジアゼニド錯体 / 酸化的二量化 / アレ-ンクロム錯体 / クプラ-ト / 共役付加 |
Research Abstract |
昨年度の研究ではジアゾアルカン錯体trans‐[MF(NN=CR-CHR^1R^2)(dpe)_2][BF_4)(M=W,Mo)1の脱プロトン化で生成するアルケニルジアゼニド錯体trans‐[MF(N=NCR=CR^1R^2)-(dpe)_2](M=W,Mo)2が強い求核性を示す興味深い化合物であることを明らかにした。本年度は、まず2の酸化挙動について検討したところ、新規な酸化的二量化反応が進行することを見いだした。1をベンゼン中LDAで処理して生成させた2の溶液に過剰のI_2あるいはCuC1_2を加えて室温で攪拌して反応を行い、KIaqまたはNH_4BF_4aqで洗浄後再結晶したところ、 ^1H NMR、IR、元素分析から2がC=Cの末端で酸化的二量化したと考えられる錯体[(dpe)_2FM(NN=CRCR^1R^2-CR^1R^2CR=NN)MF(dpe)_2]^<2+>3が収率22〜60%で得られた。R=R^1=H,R^2=Meの場合には生成物3a(M=W),3b=(M=Mo)のジアステレオマ-比はthreo:erythro=2.1:1〜3:1であった。3aをCH_2C1_2-C_6H_6から再結晶して得られる単結晶(3a[BF_4]_2・6C_6H_6)についてはX線構造解析を行った。結晶学的デ-タは次の通り;monoclinic,C2/C,a=32.899(3)A,b=13.091(1)A,c=32.866(4)A,β=109.782(7),V=13320(2),A=4,Dcalcd=1.386g/cm^3,Dmeasd=1.39g/cm^3,R=0.069,Rw=0.078。これにより主生成物の錯体がC_2軸を持つ構造(threo体)で、ジアゾアルカン配位子のαー炭素同士で結合していることが確認された。一方、単離可能なアルケニルジアゼニド錯体2c(M=W,R=H,R^1=R^2=Me)、2d(M=W,R=H,R^1=R^2=Rh)のCVを測定したところ、それぞれ0.32V、0.36V(vs Ag/Ag^+)に酸化波を示し、溶易に一電子酸化を受けることが判明した。このことから上の酸化的二量化反応はまず2が一電子酸化を受けて生成したラジカルカチオンが二量化して進行したものと考えられる。 また、2のアリ-ル化法として2e(M=W,R=Me,R^1=R^2=H)と(p‐FC_6H_4R')Cr(CO)_3の反応を検討した結果、収率56%(R'=H)〜54%(R'=Me)でtrans‐[WF[NN=CMeCH_2{(p‐C_6H_4R')Cr(CO)_3}]‐(dpe)_2][BF_4]が得られることも見いだした。アルケニルジアゼニド錯体の新規な生成法開発についても検討を加え、α,β‐不飽和ジアゾアルカン錯体とクプラ-トの共役付加反応でも対応するアルケニルジアゼニド錯体が生成し、さらにアルキル化反応などに供する事ができることを見いだした。
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