1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03222201
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
江尻 慎一郎 岩手大学, 農学部, 教授 (90005629)
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Keywords | 翻訳制御RNA / EFー1 / プロテインキナ-ゼ / ペプチド鎖伸長因子 |
Research Abstract |
目的:真核生物では、転写と翻訳の場所と時間が異なることから,翻訳制御の重要性が増大する。翻訳制御に関し、ペプチド鎖伸長反応の制御系は不明であったが,筆者らはカイコ絹糸腺の系で,伸長因子EFー1のリン酸化による翻訳制御系の存在を明らかにするとともに,EFー1に結合しているRNA(EFー1RNA)を発見した。本研究では,このRNAの構造を明らかにするとともに,EFー1のリン酸化に対する本RNAの影響等を解析し,翻訳制御における本RNAの生理的機能を推定する。 方法:(1)EFー1RNAの塩基配列をもとに,ホモロジ-検索を行ない,二次構造,類似のRNA等を検索し,本RNAの機能を推定する。(2)カゼインキナ-ゼII類似のβーキナ-ゼが,EFー1のβサブユニットをリン酸化するので,この系にEFー1RNAを添加し,βのリン酸化および活性を解析する。 結果:(1)EFー1RNA,246塩基のRNAで,分子全体にわたり二重鎖を形成し,全二次構造のエネルギ-は-129Kcal/molであった。ホモロジ-検索の結果,本RNAの3側半分は,カラヌスの28srRNAの3'末端部と82%のホモロジ-があったが,5'側半分は21%のホモロジ-であった。これらの亊実等から,本RNAは新規のRNAと判断した。(2)EFー1RNAは,コムギ胚芽無細胞系でのタンパク合成を阻害するとともに,βーキナ-ゼによるEFー1βサブユニットのリン酸化を阻害した。βーサブユニットは,大腸菌のEFーTsに相当する因子であり,脱リン酸化によりタンパン合成促進活性が消失し,再リン酸化で活性が回復する。 以上の結果は,EFー1をめぐる新翻訳制御系を確立する突破口となるものと考えられ,今後その分子機構を詳細に解析する必要がある。
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[Publications] 江尻 慎一郎: "遺伝子発現の翻訳レベルにおける制御" 化学と生物. 29. 552-553 (1991)
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[Publications] 長山 英男: "蛋白質生合成研究の草創期ー志村憲助先生に聞くー" 蛋白質核酸酵素. 36. 1867-1886 (1991)
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[Publications] 江尻 慎一郎: "新生化学実験講座第1巻タンパク質VI.合成および発現" 日本生化学会(東京化学同人), 9 (1992)