1991 Fiscal Year Annual Research Report
ダイニンのプロテア-ゼ消化フラグメントによる微小管の滑り運動
Project/Area Number |
03223206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 一男 東京大学, 理学部, 助手 (80221779)
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Keywords | ダイニン / プロテア-ゼ / 滑り運動 / 微小管 / 細胞運動 / 細胞骨格 / プロテアソ-ム / ユビキチン |
Research Abstract |
ダイニンを種々のプロテア-ゼにより消化し,得られたフラグメントにより引き起こされる微小管滑り運動を調べることは,ダイニンの分子構造と機能を関連づける上で重要であり,微小管系細胞運動研究の基礎となりうる。本研究ではまずダイニンβ鎖上での,ATP/バナジン酸存在下におけるトリプシン切断部位のマッピングを,ダイニン特異抗体を用いたイムノブロッティング法により行った。その結果,ダイニン重鎖ダイニン重鎖のATP結合部位近傍でダイニン重鎖が切断されることがわかった。このことは,ダイニンがATPを分解する際,ATP結合部位付近のコンホメ-ションが変化することを示唆する。次にダイニンをはじめとする微小管結合タンパク質のプロテア-ゼ分解が,微小管滑り運動の際に起こっているのか否かを,細胞運動の中では古くから詳細に調べられている精子鞭毛運動系で調べた。まず種々のプロテア-ゼインヒビタ-をシロサケ精子除膜モデルに作用させたところ,数種のキモトリプシン様セリンプロテア-ゼインヒビタ-によりモデルの運動が阻害された。またこれらの阻害は高濃度ATPによって再活性化されたモデルにのみに観察された。つまり,内在性プロテア-ゼはATP依存的に機能していると考えられる。そこでシロサケ精子抽出液から種々のカラムクロマトグラフィ-を用いてキモトリプシン様プロテア-ゼの精製を試みた。その結果,分子量95万,65万の二種の高分子量プロテア-ゼの存在が明らかになった。これら二種のプロテア-ゼはサブユニット構造等から,真核生物に広く分布している多機能プロテア-ゼ(プロテアソ-ム)と同一であると思われる。プロテアソ-ムはユビキチン系タンパク質分解経路に関与していると考えられており,微小管結合タンパク質のユビキチン化を手掛りにして,微小管滑り運動の分子機構を今後詳細に調べていきたい。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Inaba,K.,Ogawa,K.,and Mohri,H.: "Mapping of ATP‐dependent trypsin‐sensitive sites on the beta chain of outer‐arm dynein from sea urchin sperm flagella" Journal of Biochemistry. 110. 795-801 (1991)
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[Publications] Inaba,K and Morisawa,M.: "A chymotrypsin‐like protease involves in motility of sperm in salmonid fish" Biomedical Research. 12. 435-437 (1991)
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[Publications] Inaba,K.,Akazome,Y.,and Morisawa,M.: "Two high molecular mass proteases from sea urchin sperm" Biochemical and Biophysical Research Communication. 182. 667-673 (1992)
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[Publications] Inaba,K.and Mohri,H.(ed.,Baccetti,B.): "Interactions among the heterogenous components of dynein" In“Comparative Spermatolgy : Proceedings of the VIth International Congress on Spermatology". (1992)
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[Publications] Mohri,H.and Inaba,K.(ed.,Baccetti,B.): "Conformational Changes of dynein molecule" In“Comparative Spermatology : Proceedings of the VIth International Congress on Spermatology". (1992)