1991 Fiscal Year Annual Research Report
極超短時間分解非線形光散乱スペクトルに現れる溶液のゆらぎ効果に関する理論的研究
Project/Area Number |
03231202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤村 勇一 東北大学, 理学部, 助教授 (90004473)
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Keywords | 極超短時間分解分光 / コヒ-レント反スト-クスラマン散乱 / 非マルコフ効果 |
Research Abstract |
本研究は昨年の研究課題を発展させるために行ったものである。我々はフェムト秒時間領域の極超短時間で起こっている溶液中分子のダイナミクスを解明するために,非線分生の一つであるコヒ-レントanti‐stokes Raman散乱(CARS)法が有効である事を提唱して来た。これまで用いられていたCARSスペクトルの表式は,マルコフ近似のもとに立脚していたが,極超短時間内では,溶液の分子と分子の衝突時定数が分子の振動の時定数と同じオ-ダ-となり,このマルコフ近似が破れることが生じる。そこで,本研究ではまず,非マルコフ条件下でのスペクトル表式を導出し,次にこの表式を用いて,分子間振動コヒ-レンス移動がマルコフ近似を用いない場合に,スペクトルがどの様になるのかモデル計算を行った。まずスペクトル表式を導出するために,分子間振動位相緩和と分子間コヒ-レンス移動のミクロな式を,分子と熱浴との相互作用と熱浴の相関々数の項で表わし,ストカスティクモデルで分子と熱浴相互作用を記述して,非マルコフ性の時間分解CARSスペクトル式を求めた。非マルコフ性は時間分解CARSプロフィルに現れる量子ビ-トの振動数に変化を与える事がモデル計算により明らかにされた。この結果は,溶液のゆらぎにもしマルコフ性が働けばその効果は,時間分解CARSプロフィルを解析する事によってその効果の大きさが実験から見積る事が可能である事を示している。
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[Publications] 菅原 道彦: "Non‐Markovian effects of intermolecular vibrational coherence on temto second time‐resolved coherent anti‐Stokes Raman Scattering from molecules condensed phases" Chem.Phys.Letters. 189. 346-352 (1992)
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[Publications] 林 倫年: "Mechanism of intermolecular dephasings on time‐resolved anti‐Stokes Raman scattering from a molecular ensemble" Phys.Rev.A. 43. 2416-2429 (1991)
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[Publications] 野村 泰志: "Vibronic coherence between the sequential transitions in two‐photon transitions induced by incoherent light beams" Phys.Rev.A. (1992)