1991 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウム結合蛋白質の金属配位構造の安定性とその動的構造方化ー遺伝子操作法によるカルモデュリンの酵素活性化機構の研究
Project/Area Number |
03241201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
矢沢 道生 北海道大学, 理学部, 助教授 (50101134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平沖 敏文 北海道大学, 工学部, 助教授 (10125346)
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Keywords | カルシウムイオン / カルシウム結合蛋白質 / カルモデユリン |
Research Abstract |
カルモデユリンは、細胞内情報伝達にかかわるカルシウム結合蛋白質の代表的なものである。細胞外からの刺激で細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇すると、カルモデユリンは4モルのカルシウムイオンと結合してその高次構造を変え、多くの種類の標的酵素を活性化する。この研究の目的は、カルモデユリンの酵素活性化機構を明きらかにすることである。この目的のために、遺伝子工学的な手法でカルモデユリンの変異体蛋白質をつくり、カルモデ優リンがカルシウムイオンを結合してから酵素の活性化に至る過程と、そのときの動的な構造方化を追跡するという手段をとった。平成3年度は、パン酵母カルモデユリンの第4番目のカルシウム結合サイトの構造を中心とした変異体を多数つくった。酵母カルモデユリンのこのサイトにはカルシウムが結合せず、脊椎動物由来の標的酵素を活性化する能率はきわめて悪いので、これを改善する方向で変異を加えていった。できあがった。変異体のうちで、この第4サイト部分を脊椎動物(鶏)カルモデユリンの第1〜第3サイト部分につないだ形の組換体(C4Y)とその誘導体が興味深い性質をもっていた。C4Yは、酵母カルモデユリンと同様にカルシウムを3モルしか結合せず、酵素を活性化する能率もきわめて悪い。しかし、このC4Yの第4カルシウム結合サイト内のアミノ酸残基を1残基とり換えてえられた変異体C4Y140Eは、脊椎動物カルモデユリンと同様に4モルのカルシウムイオンを結合し、高い酵素活性化能を示すことがわかった。アミノ酸残基1つのちがいで、このような性質のはっきり異なる2種類の蛋白質がえられたので、これらを試料にしてNMR法により、カルシウム結合による構造変化と、標的酵素およびモデル物質との相互作用に関する知見をもとめる作業を継続している。
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[Publications] I.Matsuura,K.Ishimara,Y.Nakai,M.Yazawa,H.Toda,K.Yagi: "A Site‐Directed Mutanenesis Study of Yeast Calmodulin" J.Biochem.109. 190-197 (1991)
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[Publications] 平沖 敏文: "NMRによる蛋白質の構造解析" 化学と生物. 30. 130-135 (1992)
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[Publications] H.Toda,M.Yazawa,K.Yagi: "Amino acid sequence of calmodulin from Euglena gracilis" Eur.J.Biochem.(1992)
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[Publications] M.Yazawa,T.Vorherr,P.James,E.Carafoli,K.Yagi: "Binding of Calcium by Calmodulin:Influence of the Calmodulin Binding Domain of the Plasma Membrane Caldium Pump" Biochemistry. (1992)