1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03246208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 俊一 東京大学, 理学部, 教授 (90029471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝本 信吾 東京大学, 理学部, 助手 (10185829)
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Keywords | 金属微粒子 / スピン散乱 / 離散準位 / ナイトシフト / 寿命幅 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
金属微粒子中の伝導電子の軌道運動のエネルギ-準位が離散的であることから、バルクな金属とは異なった性質が現われる。本研究は、離散的な準位をもつ固有状態の性質が、不純物スピンによるスピン散乱や、重い不純物によるスピン軌道相互作用にどのように影響されるかを調べることを目的とする。 本年度は、銅微粒子にマンガンを不純物として導入し、スピン散乱によって準位の幅が広がり、離散準位効果が消滅するのを観察した。プロ-ブとして、核磁気共鳴のナイトシフトを使った。離散準位は偶数この電子をもつ微粒子のスピン帯磁率を低下させる働きをするが、ナイトシフトはスピン帯磁率に比例するため、離散準位の情報を得ることができる。マンガンの濃度が2000ppmに達すると、ナイトシフトはバルクの正常値に回復することが分かった。興味深いことに、平均の準位間隔をdとすると、この濃度に対応するスピン散乱時間τ_sはh/δに等しい。つまり、τ_sはスピン状態の寿命であるにもかかわらず、離散準位の寿命幅をh/τ_sと考えてよい。 ナイトシフトの実験と平行して、準品として購入した早いスイッチが可能な超伝導マグネットの整備を行なった。これを用いた磁場循環法によって、核スピンのスピン格子緩和時間を測定し、スピン帯磁率の動的側面を調べる予定である。 さらに、重い元素として金を合金した銅微粒子のナイトシフトの予備的な測定を済ませた。金の濃度が3%でナイトシフトは正常値に回復した。この濃度はスピン軌道相互作用によってスピンが反転するのに要する時間の逆数のh倍に等しい。ただし、この回復の原因はスピン散乱の場合とは異なり、固有状態に逆向きスピンが混入したためであると解釈される。 次年度にはこれら二つの系のスピン格子緩和時間を測定する。
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Research Products
(1 results)