1991 Fiscal Year Annual Research Report
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03248207
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増澤 敏行 名古屋大学, 水圏科研究所, 助手 (40023858)
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Keywords | 深海シロウリガイ群集 / 冷湧水 / 間隙水 / しんかい2000 / 硫酸還元 |
Research Abstract |
1984年に「しんかい2000」による潜航調査で発見された相模湾初島沖の深海シロウリガイ高密度群集の、「しんかい2000」を用いる潜航調査に1986年以来参加して来ている。これまでの調査研究の結果、最大の課題は“冷湧水"の実態を明らかにすることであり、その為には生きているシロウリガイ群集直下堆積物中の間隙水の化学組成を鉛直分布として明らかにすることが最も直接的な解明への道となる。我々は、潜水調査船用重錘コアラ-に続き、世界的にもあまり例がない潜水調査船用現場間隙水抽出装置(ISDSーS)を設計,試作し、「しンかい2000」のほぼ年1回という、極めて限られた機械の中で作動経験をつみかさねてきた。1989年の第449潜航,1990年の第521潜航での作動結果をふまえ、海水ー堆積物境界面を含む深さ差6深度の間隙水を現場で効率よく採用することを目標として、装置の能力,操作性及び作動の確実性の向上を目ざして、改良,改造を行って来た。本年度は特に、装置の作動開始及び作動修了を制御する機構の改良を行った。本年の潜航調査は11月30日に予定されたが、海況が悪く中止され、12月3日に潜航調査を行うことができた。1988年の第380潜航以来全く同じシロウリガイのパッチで調査をしているが、昨年に比べてもなおシロウリガイ群集の勢いが強くなっているように感じられた。今回の第593潜航で、初めて全6層での間隙水の採集に成功した。第380潜航では、深さ16cmまでの間隙水の詳細な分布が求められたが、今回の成功により深さ45cmまでの間隙水の鉛直分布が明らかにされた。その結果深さ27cmまでで硫酸イオン濃度は、海水の10%以下になっており、また深さ18cm以深で最高9.0m mol/kgという極めて高い硫化水素濃度が見出され、この硫化水素がシロウリガイ群集を支えていることが示された。
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[Publications] Masuzawa,T.: "Sulfate reduction using methane in sediments beneath a bathyal “cold seep" giant clam community off Hatsushima Island,Sagami Bay,Japan." Earth and Planetary Science Letters.
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[Publications] Kitagawa,H.: "A batch preparation method of graphite target with low background for AMS Cー14 measurements." Radiocarbon.
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[Publications] 増澤 敏行: "潜水調査船用現場間隙水抽出装置による相模湾初島沖海底生物群集からの間隙水の採集:その2(「しんかいに000」第521潜航)" 第7回「しんかい2000」研究シンポジウム報告書. 7. 7-15 (1991)
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[Publications] 増澤 敏行(分担執筆): "海と地球環境ー海洋学の最前線(日本海洋学会編)" 東京大学出版会, 411 (1991)
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[Publications] 増澤 敏行(分担執筆): "大気水圏の科学ー黄砂(名古屋大学水圏科学研究所編)" 古今書院, 328 (1991)