1991 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類細胞の染色体分配突然変異株による染色体の脱凝縮と紡錘体の脱構築の解析
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03256209
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
辻 秀雄 放射線医学総合研究所, 遺伝研究部, 主任研究官 (40163795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田 和英 放射線医学総合研究所, 生物研究部, 主任研究官 (30159165)
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Keywords | 温度感受性変異株 / 細胞分裂 / 染色体脱凝縮 / ヒストンH1キナ-ゼ / セリン・スレオニン・フオスファタ-ゼ |
Research Abstract |
CHOーK1細胞由来の温度感受性変異株tsTM13は、非許容温度(39℃)においてM期後半で細胞分裂を停止し、M期からG_1期におこる現象、すなわち染色体の分配、染色体脱凝縮、および紡錘体脱構築が欠損している。これらのM期後半におこる異常がヒストンHIキナ-ゼ活性の異常な活性上昇による否かを調べた。細胞を非許容温度で培養し、M期後半で停止した細胞のヒストンH1およびH3は高度にリン酸化されていた。正常細胞ではMetaphase/Anaphaseを境としてヒストン・リン酸化は低下するのに対して、tsTM13ではAnaphaseにおいてもヒストン・リン酸化が高度に維持されており、ヒストンH1キナ-ゼは高度な活性を維持していた。さらに、ヒストンH1キナ-ゼタンパク質は脱リン酸化されており、活性型を示した。以上の結果より、tsTM13では、本来M期後半で生じるヒストンH1キナ-ゼの活性低下が認められず、このことがM期後半の異常な表現型の原因と考えられた。そこで、ヒストンH1キナ-ゼ活性を低下させる阻害剤、バナジン酸やスタウロスポリンでM期停止細胞を処理したところ、ヒストンH1キナ-ゼ活性は低下し、ヒストンの脱リン酸化がおき、凝縮した染色体は脱凝縮し、間期核となった。 染色体の凝縮、脱凝縮にはヒストンH1キナ-ゼを代表とするキナ-ゼ群とフォスファタ-ゼ群が関与することが知られている。セリン・スレオニン・フォスファタ-ゼの活性は、非許容温度においても正常であった。tsTM13のヒストンH1キナ-ゼの構造遺伝子は、H1キナ-ゼのts変異株tsFT210との相補性検定から正常であることがわかっているので、tsTM13ではM期後半に作用するH1キナ-ゼの不活化因子が遺伝的に欠損していると考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tsuji,H.,Matsudo,Y.,Tsuji,S.,Hanaoka,F.,Hyodo,M.,and Hori,T.: "Isolation of temperatureーsensitive CHOーK1 cell mutnts exhibiting chromosomal instability and reduced DNA synthesis at nonpermissive temperature." Somat. Cell Mol. Genet.16. 461-476 (1990)
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[Publications] Tsuji,H.,Hitomi,A.,Takahashi,E.,Murata,M.Ikeuchi,T.,Yamamoto,K.Tsuji,S.,and Hori,T.: "Induction of distamycin Aーinducible rare fragile sites and increased sister chromatid exchanges at the fragile site" Hum. Genet.87. 254-260 (1991)
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[Publications] Takahashi,E.,Yamauchi,M.,Tsuji,H.,Hitomi,A.Meuth,M.,and Hori,T.: "Chromosome mapping of the human cytidineー5'ーtriphosphate synthetase(CTPS)gene to band 1p34.1ーP34.3 by fluorescence in situ hybridization" Hum. Genet.88. 119-121 (1991)
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[Publications] Tsuji,H.,Matsudo,Y.,Ajiro,K.,Yasuda,H.,Hanaoka,F.,Hayashi,A.,Utsumi,S.,Ohba,Y.,and Hori,T.: "A temperatureーsensitive CHOーK1 cell mutant(tsTM13)defective in chromosone decondensation and spindle deconstruction in M phase" ExP. Cell Res.198. 201-213 (1992)
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[Publications] 辻 秀雄: "染色体不安定化変異株" 蛋白質・核身・酵素. 36. 2125-2128 (1991)
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[Publications] 辻 秀雄: "CHO染色体異常変異株" 蛋白質・核酸・酵素. 36. 2214-2216 (1991)