1991 Fiscal Year Annual Research Report
アポリポタンパクAーI遺伝子の異常による低HDLコレステロ-ル血症
Project/Area Number |
03265203
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浜口 秀夫 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (00091918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 公子 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (90215319)
有波 忠雄 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (10212648)
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Keywords | アポリポタンパクAーI遺伝子 / アポリポタンパクAーI欠損症 / アポリポタンパクAー1遺伝子ナンセンス変異 / 低HDLコレステロ-ル血症 / 虚血性心疾患 |
Research Abstract |
アポリポタンパクAーI(アポAーI)は、HDL(高密度リポタンパク)の構成や代謝に主要な役割を演じており、その遺伝子は11番染色体長腕に存在する。アポAーI遺伝子の異常により、ヘテロ接合では優性遺伝性の低HDLコレステロ-ル血症、ホモ接合ではHDLコレステロ-ルの欠乏を伴うアポAーI欠損症が起こる可能性がある。本研究は、アポAーI遺伝子異常によるアポAーI欠損症の存在を証明する目的で行った。 HDLコレステロ-ルとアポAーIの両方が欠乏した虚血性心疾患の女性患者のアポAーI遺伝子のPCR産物をクロ-ニングして、塩基配列を決定した。いずれのアポAーI遺伝子クロ-ンにおいても、コドン84のナンセンス変異(CGA→TAG,Gln→Stop)が検出された。患者の両親はいとこ婚であり、上記の結果から、患者はアポAーI遺伝子のコドン84ナンセンス変異のホモ接合と考えられた。このことは、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプロ-ブを用いたドットブロット法によって確認された。患者の3人の子はこの遺伝子のヘテロ接合であるが、いずれも低HDLコレステロ-ル血症を呈した。 本研究の成果は、アポAーI遺伝子異常のホモ接合により、HDLコレステロ-ルとアポAーIの両方が欠如する遺伝子病が存在することを示している。患者は他にリスクファクタ-を持たないことから、彼女の虚血性心疾患はアポAーI遺伝子異常が原因で発生したと解釈される。また、本研究のデ-タは、アポAーI遺伝子異常による優性遺伝性の低HDLコレステロ-ル血症が存在することを示唆している。本研究の症例には皮膚の広範な扁平黄色腫や虚血性心疾患がみられ、これまでに報告された唯一の典型的な、アポAーI遺伝子異常による分子病であると考えられる。
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[Publications] Tomoyki Matsunaga: "Apolipoprotein AーI deficiency due to a codon 84 nonsense mutation of the apolipoprotein AーI gene" Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 88. 2793-2797 (1991)
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[Publications] Hideo Hamaguchi: "Genetic approaches to coronary heart disease and hypertension" SpringerーVerlag, 159 (1991)