1991 Fiscal Year Annual Research Report
部位特異的な遺伝子挿入の分子機構と遺伝子変換の数理的解析
Project/Area Number |
03267201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 信太郎 東京大学, 理学部, 助教授 (20143357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 成也 国立遺伝学研究所, 助教授 (30192587)
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Keywords | 遺伝子変換 / 免疫グロブリン遺伝子 / 相同的遺伝子組換え |
Research Abstract |
高等真核生物では相同的遺伝子組換えの機構そのものは言うに及ばず、どうような部位で生ずるのかということの解明すら非常に不十分な状況である。そこで、高等真核生物において相同的遺伝子組換えがどのような領域で生じてきたのかを、遺伝子変換を対象にした分子進化学的解析により明らかにすることを目的として研究をすすめた。高等真核生物において遺伝子変換を受けたDNA領域のおおまかな推定は、これまでにMHCあるいはグロビンなどの多重遺伝子群で報告されている。しかし、塩基配列の単純な比較による非常に大まなか解析であることから、遺伝子変換に必要とされるDNA領域(塩基配列)の同定どころか、遺伝子変換が生じた部位の解析すら非常に不十分であった。進化に関連した遺伝子解析においては複数の遺伝子領域で解析することが、それらのデ-タの解釈に非常に重要な意味をもつ。そこで、免疫グロブリンCα遺伝子すべてのゲノムDNAの塩基配列を類人猿ならびに旧世界ザルにおいて新たに決定し、既知のヒトの配列と比較し、遺伝子変換の検出ならびに生じた部位の同定をおこなった。解析は(1)遺伝子系統樹の検定、(2)2つの遺伝子の間で共通な塩基配列の分布の検定、(3)最大節約法により遺伝子系統樹のどこでどのような塩基置換が生じたのかを推定し、遺伝子の全領域にわたりそれら塩基置換のカテゴリ-の分布を検定する、の3つの方法によりおこなった。その結果、極く少数のアミノ酸をコ-ドしているDNA領域を例外として、遺伝子変換が全領域にわたり生じてきたことが示された。このことは、生物種を問わず広く観察されたほとんどの遺伝子変換は淘汰に対して中立であり、淘汰に対し不利な遺伝子変換は除去されてきたことを示唆する。したがって、遺伝子変換は進化における一般的な現象であり、重複した遺伝子間のどの部位でも生じるものと考えられる。
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[Publications] KAWAMURA S.: "Evolutionary rate of immunoglobulin alpha nonーcoding region is greater in hominoids than in Old World monkeys." Molecular Biology and Evolution. 8. 743-752 (1991)
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[Publications] HASEGAWA M.: "On the maximum likelihood method in molecular phylogenetics." Journal of Molecular Evolution. 32. 443-445 (1991)
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[Publications] KAWAMURA S.: "Concerted evolution of the primate immunoglobulin alpha gene through gene conversion." Journal of Biological Chemistry. 267. (1992)
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[Publications] KAWAMURA S.: "Immunoglobulin C_H gene family in hominoids and its evolutionary history." Genomics. 13. (1992)
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[Publications] KAWAMURA S.: "Primatology today(Evolution of the immunoglobulin alpha gene)" Elsevier Science Publisher B.V., (1991)
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[Publications] SAITOU N.: "Handbook of Statistics(Volume8)" Elsevier Science Publisher,