1991 Fiscal Year Annual Research Report
〈感性的認識の学〉としてのAsthetikとその系譜
Project/Area Number |
03301008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩城 見一 京都大学, 文学部, 助教授 (40025086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 千秋 筑波大学, 芸術学系, 助教授
魚住 洋一 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (10168669)
村田 純一 東京大学, 教養学部, 助教授 (40134407)
米澤 有恒 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (70093341)
太田 喬夫 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (30098230)
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Keywords | 形象認識 / 感性的認識と言語的認識 / M.ハイデッガ-の芸術哲学 / 美の完全性 / 20世紀現象学的美学 / G.ベ-ム / M.イムダ-ル / 様式史 |
Research Abstract |
研究課題の解明に当たり、まず代表者によるテ-マ説明を兼ねたカントの美論に関する論文の配布、会合における〈形象認識の固有性〉についての発表を通して、感性的認識と言語的認識との差異と両者の間の翻訳可能性について議論された(6月、9月)。次いで、米沢、太田、井面を発表者として、M.ハイデッガ-の芸術哲学に基づく〈美の完全性〉の現代的意義、20世紀現象学的美学とG.ベ-ムの提起する形象解釈学の意義と限界、M.イムダ-ルの造形芸術解釈の方法の可能性が示され、これらの問題を巡ってきわめて活発な議論が戦わされた。この議論の中で浮き彫りにされたのは、形象と言語との連関の論理がより厳密に検討されねばならないということ、さらに、形象的認識のモデルとして芸術を捉える場合にも、この認識には常にそれの属する歴史的社会的条件が関与するため、いわゆる〈純粋〉形象認識というかたちで課題を追求することによっては、その固有性は十分捉えられないということである(10月〜1月)。分担者のこの厳しい批判を通して、我々は改めて〈感性的認識の学〉としての美学(Asthetik)の可能性を問うことになった。さらに三月末にはゲストを招き中世における美の理論についての講演と議論が予定されている。これと並んで、今年度各分担者は、我々の課題に相応しい研究(例えば、ベルクソンの美学〈上村〉,現代受容美学の立場からの美術史の批判的検討〈加藤〉、現代情報論〈吉岡、室井〉、美的経験の歴史〈太田〉、様式史の問題〈井面〉、滑稽論〈岩城〉等)を著書や雑誌、学会口頭発表を通して公にし、各分担者は、これらの成果を交換し合うことで、会合で十分論じえなかった問題についての知見を得ることができた。また基本図書とともに、ミュンヘン美術史研究所所蔵の研究文献総目録のマイクロ・フィッシュを購入し、これらは既に利用に供されている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 井面 信行: "像プロセスと直観プロセスーマックス・イムダ-ルのイコニックについてー" 文学・芸術・文化 近畿大学文芸学部論集. 3ー3. (1992)
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[Publications] 上村 博: "画像と現実感" 京都大学文学部美学美術史学研究室研究紀要. 13. (1992)
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[Publications] 岩城 見一(上倉 庸敬,神林 恒道,太田 喬夫 編): "芸術学フォ-ラムI・芸術学の軌跡(「フモ-ルの近代性」)" 勁草書房, 314 (1992)