Research Abstract |
1.萬葉集古写本の所在につき,校本萬葉集に未収のものなど新たに発見された断簡もあり,元暦校本,類聚古集,尼崎本等次点本も実見の機会を得,校本萬葉集の補訂すべき点もいくつか確認できた。 2.特に,西本願寺本については,前に実見した原本を、精密なポジカラ-フィルムによって確認,さらに疑問点を発見し,再び原本について確かめることが次年度に予定されている。 3.同時に西本願寺本を翻刻し,本文・訓・ヲコト点・声点や,見セ消チ,削訂,重書も記述する方針を立て,字体については校本萬葉集・定本萬葉集の字体表を参考にしつつ,さらに原本の字形を生かすこととした。 4.同翻刻は,写体と活字の組みの相違を考慮しつつ,訓熟合字の漢字と仮名の並べ方にも配慮し,巻一〜十,十三,十五,十八がほぼ完成した。 5.特に仙覚改訓を示す青訓が変褪色し,さらに朱や墨で重書するものに注意を集中し,三度の重書なども指摘,記述したのは,竹柏会版複製で全て青訓に復元した見識に対して,あくまで実状に即し,主婦の友社版をさらに補訂して,仙覚改訓を確認する大きな成果ということができる。 6.西本願寺本は仙覚本現存最古といえども誤写は免がれないので,他の仙覚本による比較対照して仙覚の萬葉集校訂を確認するために,神宮文庫本・阿野本・金沢文庫本・大矢本・陽明本・近衛本・京都大学本等の古写本につき,特に青訓を中心に調査を進め,さらにその再確認を行い,ほぼ全巻につき一応完了している。 7.西本願寺本を底本として,これら仙覚本古写本との校合も進み,現在巻一〜五,七,八,十などがほぼ校異を記し終っている。 8.これらの作業のために,7回の研究会,3回の編集会議を持ち,その他各巻ごとの打合せや討議が数多く行われ,お茶の水図書館・京都大学図書館・神宮文庫・陽明文庫等に頻繁に赴き調査を重ねた。
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