1991 Fiscal Year Annual Research Report
分子集合体におけるフラクタル構造の形成と光励起ダイナミックス
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03403001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 巌 北海道大学, 工学部, 教授 (80002111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 賢宣 北海道大学, 工学部, 助手 (60218211)
一ノ瀬 暢之 北海道大学, 工学部, 助手 (00232405)
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Keywords | フラクタル / LB膜 / 疎水性高分子 / ピコ秒レ-ザ- / 励起エネルギ-移動 / 蛍光減衰曲線 / 高分子コロイド / 相転移 |
Research Abstract |
近年、物理化学における課題のひとつに、複数個の分子が集合して作られる分子凝集体のモルフォロジ-(形態学)と光励起エネルギ-緩和の問題がある。分子の空間的な分散には一定の規則性(フラクタル構造)が存在し、これが励起分子ダイナミクスにおける特異的なふるまいに関連している。本研究課題では、化学における「フラクタル構造」を確立するとともに、これが光励起エネルギ-緩和と如何に密接に関わっていることを示すことが目的である。本年度の成果は次のように要約される。 (1)ピコ秒レ-ザ-蛍光分光装置の改良を完成 蛍光の検出器として従来の光電子増倍管から冷却型CCDストリ-クカメラへ変更し、蛍光減衰曲線の測定においてフェムト秒時間分解能を達成させ、フラクタル構造・フラクタル次元について高い精度で測定できるようにした。 (2)単分子膜中のフラクタル構造分子の形状とフラクタル分散との相関、 LB単分子膜の中に取り込まれる発色団分子として、各種の色素分子とともに、各種の芳香族炭化水素とくに長鎖アルキル基を有するフルオレン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレンを新たに合成し、これらのLB膜を作製することができた。次いで、これらのLB膜について蛍光減衰曲線および時間分解蛍光スペクトルを測定し、エネルギ-緩和の経路と速度について検討し、それぞれのフラクタル構造と関連させることができた。 (3)疎水性高分子におけるミクロ凝集体におけるコロイド粒子内部における有機分子のフラクタル構造 疎水性高分子ヒドロキシプロピルセルロ-スは水溶液中でコロイドをつくり、発色団分子としてのピレンはその中で一定の秩序構造を形成する。この様子を相転移との関連において明かにすることができた。すなわち温度を0Cから50Cまで変化させることにより、コロイド中でのエキシマ-形成がいちじるしく変化し、相転移が起こり、それとともに蛍光減衰曲線が変化し、相転移にともなってフラクタル構造が変わることを明かにした。この研究成果はJ.Phys.Chem.誌に印刷公表された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Minami,N.Tamai,T.Yamazaki,I.Yamazaki: "Picosecond TimeーResolved Fluorescence Spectroscopy of the Photochromic Reaction of Spiropyran in LangmuirーBlodgett Films" J.Phys.Chem.95. 3988-3993 (1991)
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[Publications] F.M.Winnik,N.Tamai,J.Yonezawa,Y.Nishimura,I.Yamazaki: "TemperatureーInduced Phase Transition of PyrenーLabeled(Hydroxypropyl)cellulose in Water:Picosecond Fluorescence Studies" J.Phys.Chem.96. 1967-1972 (1992)
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[Publications] N.Tamai,H.Matsuo,T.Yamazaki,I.Yamazaki: "Excitation Energy Relaxation of Oxacyanine in LangmuirーBlodgett Films:Picosecond TimeーResolved Fluorescence Studies" J.Phys.Chem.(1992)
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[Publications] N.Ichinose,Y.Nishimura I.Yamazaki: "Exctiation Energy Relaxation and Dimer Formation of Fluorene in LangmuirーBlodgett Monolayer Films" Chem.Phys.Letters. (1992)
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[Publications] 山崎 巌: "分子組織体から分子素子へのアプロ-チ" 化学と教育. 39. 285-289 (1991)
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[Publications] 山崎 巌: "化学総説No.12「表面励起プロセスの化学」日本化学会編" 学会出版センタ-, 10 (1991)