1994 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエにおける多重遺伝子の分子集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
03404001
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山崎 常行 九州大学, 理学部, 教授 (10108649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁田坂 英二 九州大学, 理学部, 助手 (60222189)
原田 光 九州大学, 理学部, 助手 (40150396)
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Keywords | ショウジョウバエ / 多重遺伝子 / アミラーゼ / トランスポゾン |
Research Abstract |
高等生物の遺伝子ゲノムには多数重複して存在する遺伝子族が知られている。これらは染色体の進化、遺伝子構造、突然変異の生成機構等に大きな影響をもたらしていることが推定されている。本研究ではこれらのうち、非常に多型的であり、重複遺伝子でもあるアミラーゼ遺伝子をメインテーマとして遺伝子多型の程度、特に適応度との関係について、分子進化論的な立場から研究を進めると同時に、その調節機構と調節領域の変異について調べた。 また、ゲノム内に広がった外来性遺伝子、トランスポゾンのうち、ハイブリッドヂスジェネ-シスを引き起こすP、I因子について、特にこれらによって誘発された突然変異の分子構造や突然変異率を調べることによって、これら外来性因子の生物の適応進化に及ぼす役割をある程度まで明らかにした。 アミラーゼ遺伝子に関してはキイロショウジョウバエを含む近縁種8種の調節領域と全コ-デイング領域の塩基配列を決定し、その分子機能に関してもほぼ解明しつつある。塩基配列の解析の結果、種内での置換と種間での置換の様相には大きな違いがあり、一般に種間ではアミノ酸置換が有意に多く、種内置換では同義置換が相対的に多いという傾向が明らかになった。このことは種の分化においてはコ-デイング領域における塩基置換が適応進化によって起こったということを示唆している。また、二つの重複遺伝子間の5′、3′調節領域では種を越えてproximal特異的、あるいはdistal特異的な配列を持つことが明かとなっている。つまり、ふたつの遺伝子間での発現調節機構に分化が生じている事を示している。 ハイブリッドディスジェネシスを起こすI因子の起源に関して、キイロショウジョウバエの近縁種8種の染色体腕と動原体領域のI因子についてクローニング、塩基配列決定を行ない、分子系統樹を作製した。その結果は非常に興味深いもので、動原体と染色体腕に存在するI因子の起源はそれぞれ異なり、動原体に存在するI因子は近縁種が分化する前に存在していたもので、染色体腕に存在するものは種分化のあとに、おそらくは水平伝播によってもたらされたものだと考えられた。
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[Publications] Yamaguchi,Y.: "Molecular analysis of Gpdh nullmutations that arose in mutation accumulation experiments in Drosophila melanogaster." Heredity. 73. 397-404 (1994)
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[Publications] Nitasaka,E.: "The relationship between DNA structural variation and activities of Pelements in Pand Q strains of Drosophila melanogaster." Heredity. 73. 608-615 (1994)
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[Publications] Shibata,H.: "A comparative study of the enzymological features of 2-amylase in the Drosophila melanogaster species subgronp." Jpn.J.Genet.69. 251-258 (1994)
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[Publications] Inomata,N.: "Evolutionary relationships and sequence variation of 2-amylase variants encodea by duplicated genes in the Amylocus of Drosophila melanogster." Genetics. (印刷中). (1995)
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[Publications] Shibata,H.: "Molecular evolution of the Duplicated Amy locus in the Drosophila melanogaster species sukgroip cocerted evolution only in the coding regi on and anexcess of nonsynonymous substitutions in speciation." Genetics. (印刷中). (1995)