1991 Fiscal Year Annual Research Report
酸性硫塩土壌の特性および強酸性化現象にともなう樹木の生理反応と耐性種の検索
Project/Area Number |
03404009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 恵彦 東京大学, 農学部, 教授 (20196158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 克己 東京大学, 農学部, 助手 (80211895)
丹下 健 東京大学, 農学部, 助手 (20179922)
井出 雄二 東京大学, 農学部(林), 助教授 (90213024)
八木 久義 東京大学, 農学部, 助教授 (80191089)
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Keywords | 酸性硫酸塩土壌 / パイライト / Mn過剰障害 / クロロシス / 酸性土壌耐性 / シラカンバ / 熱帯産アカシア / 組織・細胞培養系 |
Research Abstract |
本研究は、国内および熱帯地方において大きな問題となっている酸性硫塩土壌の特性と強酸性ストレスに対する樹木の反応の解明を目的としている。本年度は、北茨城、東北、北海道、を中心に土壌調査をおこない、酸性硫酸塩土壌の分布と母岩の成分の分析をおこなった。その結果、第三系にはかなりの頻度で硫黄含量の高い堆積岩層が存在することがわかった。この硫黄含量の高い母岩は過酸化水素で強制酸化すると硫酸が生成し、pHが2以下にまで下がることがあった。鉄の含量が高いことからパイライトなどの硫化鉄が母材中に多く存在していることがわかった。酸性硫酸塩土壌に生育する植物にはさまざまな障害が観察され、土壌水のpHが4〜5程度であっても障害を受ける植物が多くあった。そのほとんどが葉脈間にクロロシスを生じており、葉分析によりMnの過剰障害であることが明らかになった。シラカンバを用いて、水耕栽培によりMn過剰に対する反応を観察すると、現地調査で観察されたクロロシスと同じ症状が現れた。葉中にMnが蓄積するにつれて光合成速度およびクロロフィル量が減少したが、クロロフィル量あたりの光合成速度も減少しており、光合成速度の低下にはクロロフィルの減少以外の機能の低下も原因となっていることが明らかになった。クロロフィル蛍光反応の解析から、この機能低下は光化学系IIの障害であると推測された。また他の植物に比べ、シラカンバは葉へのかなりのMnの蓄積に対しても障害をしめさず、酸性硫酸塩土壌に耐性のある樹種の候補となることがわかった。シラカンバのほかに耐性種の候補として、熱帯産アカシアの組織培養系を確立した。またこのアカシアの細胞培養系を用いて、低pHおよび高Mnに対する細胞レベルでの反応を調べたところ、有機物イオンの細胞からの放出をともなう何らかの適応的反応をしめすことがわかった。今後はその適応機構を解明するとともに、耐性細胞の選抜をおこなう。
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