1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03404033
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 啓也 東北大学, 医学部, 教授 (20046907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呉 繁夫 東北大学, 医学部, 助手 (10205221)
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Keywords | 非ケト-シス型高グリシン血症 / グリシン開裂酵素 / DNA診断 |
Research Abstract |
非ケト-シス型高グリシン血症(NKH)は、常染色体劣性の遣伝疾患であり、その病因はグリシン開裂酵素の障害に基づく。そのうち最も頻度の高いP蛋白欠損症については既に吾々のグル-プによりヒトP蛋白遣伝子のCDNAがクロ-ニングされ、遣伝子レベルの解析が進められている。NKHはフィンランドに於てその頻度が12,000人に1人と高頻度に存在することが知られているので同地域における本症の遣伝的欠損を明らかにする目的で典型的な臨床経過を呈したNKH患者よりリンパ芽球網胞株を樹立しP蛋白遣伝子の構造解析を行なった。その結果血縁関係のない3例のNKH症例において同じ変異、すなわちP蛋白遣伝子のエクソン内にセリンからイソロイシンへの点変異が見出された。次いで正常のP蛋白cDNA及び変異P蛋白cDNA(上述のS564I変異を有するcDNA)をそれぞれ発現ベクタ-(pーEUKーc)に組込み、それぞれのベクタ-をリポフェクチン法によりCos7細胞に導入し、48時間培養後にそれぞれの細胞のP蛋白活性を測定した。その結果、正常のP蛋白cDNAを導入した細胞では著明なP蛋白活性が認められたが、変異cDNAを導入した細胞ではP蛋白活性は全く認められず、この変異が病因であることが確認された。次いでS564I変異の筒便存検出法を確立した。I塩基置換の検出はPCR産物を制限酵素で消化する方法で行なった。本来この部位には制限酵素の認識部位が存在しないため、PCRプライマ-の塩基配列を1塩基変更し認識部位がPCR産物中に存在するようにした。その結果、正常アレル由来のPCR産物はRsaIにより消化され、変異アレル由来の産物はSsbIにより消化される。この方法を用いてフィンランドのNKH患者10名を調べた結果、70%のアレルにS564I変異が且出された。すなわち、S564I変異はフィンランド地方のNKHの、要存病因であることが示された。本法は出生前診断や保因者診断に有用であると考えられる。
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[Publications] 呉 繁夫,多田 啓也 他: "Enzymatic diagrosis of nonketotic hyperglycinemia with lymplablasts" J.Ped.120. 95-98 (1992)
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[Publications] 佐藤 康二,多田 啓也 他: "Glycine cleavage system in astrocytes" Brain Rcsearch. 567. 64-70 (1991)
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[Publications] 呉 繁夫,多田 啓也 他: "Stractual and expression analyses of normal and mutant mRNA encoding glycine decarboxqar Threer base deletion in mRNA causes nonketatir hypergyainemia" Biochem.Biophys.Res.Comm.174. 1176-1182 (1991)
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[Publications] 多田 啓也: "非ケト-シス型高グリシン血症の病因究明並びに診断法の開発" 日本先天代謝異常学会雑誌. 7. 16-28 (1991)
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[Publications] 多田 啓也 他: "小児科の進歩(小児科学年/1991)" 非ケト-シス型高グリシン血症(グリシン脳症)の病因究明と新しい診断法の開発. 11. 206-212 (1991)