1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03451019
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
鯨岡 峻 島根大学, 教育学部, 教授 (50032602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津守 真 日本総合愛育研究所, 特別研究員
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Keywords | 原初的コミュニケ-ション / 母子関係 / turnーtaking / コミュニケ-ション障害 / 情動表出 |
Research Abstract |
◯平成元年3月生れの二組の母子の観察が平成元年9月より開始されていたが、今年度の研究はこの観察を引き継ぐことによって、この二組の母子については当初予定していた満3才までの観察記録をほぼ手にするところまできた。特に今年度の観察からは、2才時の母子間コミュニケ-ションの内容、つまり言語的コミュニケ-ションが次第に深まりを見せて行く様子が明らかにされた。結果を暫定的に要約すると: (1)2才の初期段階では、母親が主導してコミュニケ-ションが維持されているが、中期段階では番の交代(turnーtaking)が頻繁に認められてコミュニケ-ションらしくなる。(3)ところが後期段階になると、子どもがコミュニケ-ションをリ-ドし始めて、母親に命令や指示を出す形が多くなるとともに、母親からの働き掛けを無視することも増えて、コミュニケ-ションが子ども主導に展開するようになる。現在は、「神楽おに」のスクリプトを中心にこれらの点を分析中である。 ◯今年度は、従来の観察事例に加えて、新たに二組の母子の観察を開始した。それは、前二組の開始が生後6カ月からであって、それ以前が空白期間になっていたことと、前二組の結果を踏まえてより詳細に観察を繰り返し、事実の追認と新しい発見を期待したからである。その結果を整理の中間段階として暫定的な形で述べれば次のようになる: (1)原初的コミュニケ-ションの最初期段階では、子どもの情動表出を母親が「解釈」することによって応答的に関わり、それが子どもの側にある効果をもたらすときに、コミュニケ-ション的関係が成立する。 (2)その効果が繰り返し子どもの側にフィ-ドバックされると、子どもは次第に特定の情動表出を母親から特定の関わりを引き出すための手段として用いるようになる。 そこに記号がどのように入ってくるかが次年度の研究課題となる。
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[Publications] 鯨岡 峻: "コミュニケ-ションの発達とその障害" 肢体不自由教育. No.104. 6-16 (1991)
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[Publications] 鯨岡 峻,津守 真,大石 益男: "コミュニケ-ション障害とその援助" ミネルヴァ書房, 240 (1992)