1992 Fiscal Year Annual Research Report
一人暮らしの高齢者の生活意識と社会関係の変化に関する縦断的研究
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03451029
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Research Institution | HOKUSEI GAKUEN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
杉岡 直人 北星学園大学, 文学部, 助教授 (10113573)
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Keywords | ひとり暮らし / パネル調査 / インフォーマルネットワーク / 縦断的研究 / ライフスタイル / コミュニティ ケア / ファミリー ケア / 国際比較研究 |
Research Abstract |
1.社会関係と生活意識の変化 社会関係は、ADL(日常生活動作能力)によって左右されやすく,健康状態がよくないほど近隣関係は消極的となる。その理由を相互作用を支える規範の互酬性からみると、自分から出かけたり、働きかけることが困難となるため、自分をとりまく他人の意志や関心に依存することを回避する傾向をもつようになるためと考えられる。しかも年齢が高くなるにつれて社会関係に占める子どものウエイトが大きくなっていくことは、一人暮らしの高齢者に対する子どもの側の情緒的なアタッチメントや扶養規範が老親との持続的な関係を維持させる結果といえ、一人暮らしの高齢者の生活にとって、高齢になるほど家族の占める位置は大きいといえる。 2.高齢者の生活環境が与える社会関係への効果 農漁村地域の近隣関係の重層性は、都市地域のそれに比較すると大きな相違を示しており、近隣関係における生活の可視性[お互いの生活を観察する機会の程度]が大きい農漁村地域ほど近隣関係に対する依存を避けようとする傾向がみられ、反対に、例え遠距離にあるとしても家族結合に対する期待と現実の相互作用が強化されるという傾向がみられる。 3.国際比較研究への視点:今後の課題 一人暮らしの高齢者の国際比較研究は、対象をコントロールすることができる点で、最も比較可能性を保障するものである。家族結合に収斂する高齢時の日本の高齢者の社会関係の特質を考慮するとき、高齢者の離婚の増加が指摘されている日本の状況は、家族結合の構造的な弱化を招くことを予測させから、その代替的機能がどのように働くことになるのかを、現在すでに離婚率が高い西欧社会との比較によって可能にしうる。
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