1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03451058
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
平尾 良光 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 化学研究室長 (40082812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 繁夫 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 第三修復技術技部研究 (60088797)
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Research Abstract |
本研究の目的は古代鉄器不純物として微量に含まれる鉛の同位体比を測定し、鉄器の分類および、産地推定を行なうことである。 1)実験方法の確立、2)標準試料の分析、3)未知試料の分析という順序で研究を進めることとした。本年度は1)に主眼点をおいた。この目的のために鉛の同位体比を表面電離型質量分析計で正確に測定することが重要である。この測定に際しては、鉄器に含まれる微量の鉛を大多量の鉄およびその他の元素から抽出し、精製する必要がある。そこで、鉄器中に含まれる超微量鉛を分離・精製するための分析法を確立すること、超微量鉛の同位体比測定の限界を把握すること、および実験資料を分析する場合の分析試料量を推定するために古代鉄器中に含まれる鉛の濃度を測定することの3点に研究を集約した。まず、実験室における鉛汚染量を測定し、汚染源となる試薬、水、器具の点検を行ない、実験室の整備を行なった。次に鉄の分解・溶液化の方法、鉛の抽出法を新たに検討した。この方法で予備実験を行ない良い結果を得たので、実際の試料について幾つかの測定を試みた。その結果、鉛濃度が予備実験の段階よりもさらに少なく、また鉛量が超微量であるために、大多量ある鉄からの鉛の分離が不十分であることが判明し、分析法のより一層の改良が必要となった。この段階では鉄の混入のために鉛同位体比測定を行なうことが出来なかった。その後、改良法を検討し、再度実験を進めた結果、古代鉄器中の鉛濃度が、0.01ppm程度であることが分った。また標準鉛を利用して超微量鉛の同位体比測定を行ない、鉛量として5ng程度までならば、測定可能であることが分った。実際試料の鉛同位体比の測定に関してはまだ行なっていないが、測定の直前まで分析を進めることができた。
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