Research Abstract |
本研究の目的は,平成4年度から施行された小学校学習指導要領における新設の教科「生活」の影響を,教師の学習指導観,児童の知的発達や学習態度におこる変化をみることによって明らかにすることである。 本年度は次の研究をおこなった。1. 生活科の授業を観察した。 (1)教師の教授活動の評価方法を開発した。前年度に作成した評価の視点にもとづいて本年度も授業観察をおこない,評価の視点の改訂をおこなった。 (2)児童の学習活動の評価方法を開発した。「状況に依存した学習」に関する最近の研究をもとに,授業観察の資料を再検討し,生活科における学習の評価の枠組みを構成した。 2. 授業に近い形態で,問答や質問紙調査を,子供にとってできるだけ自然な雰囲気の中でおこなう調査方法(ピアジェが研究に用いた,個人的な「臨床法」に比べると「集団的臨床法」と呼びうる)によって,主要な概念に関する児童の考えかたを調べ, (1)児童が,考えを言葉で表現させてみると,主要概念について,教師が予想もしなかった理解をもっていることや, (2)適切な援助指導をおこなえば,低学年児童の思考力は,ピアジェの発達段階説が想定するものよりはかなり高いことを明らかにした。 例えば,教師が「公共のもの」という意味で用いている「みんなのもの」について,児童に,その例をあげさせ,それが例として適切であるかどうかを検討させると,例として,公共物のほかに,みんなにとって大切な地球,植物,等,みんながもっている心,骨,筆箱,等が挙げられ,学校や学級文庫の本についても,通行人や他学級の児童が利用できないから「みんなのもの」とは言えないなどの検討が行われる。
|