Research Abstract |
5f電子系に見られる重い電子物性の解明を目指し,ウランを含む新しい三元化合物を探索するとともに,それらの磁化,電気抵抗,比熱の測定を行った。物質探索に当たっては,ウラン原子の環境効果を重視し,ウランを頂点とし底辺をTーX,T=鉄族元素,X=IIIーV族元素,とする三角相図において底辺TーXに近く,且つ,Xに近い部分を新物質探索領域と定めた. 物質合成にはア-ク溶解炉を使用,物質相の同定に際してはSEMによる組織観察とEPMAによる原子比の定量分析を行った.結晶構造の同定はX線粉末回折パタ-ンの測定とRietvelt解析によった.その結果,一つの新しい化合物系UTGa_5,T=Fe,Co,Ni,を得た。結晶構造は空間群P4/mmmの正方晶に属し,格子定数は,それぞれ,a=4.21Å,c=6.80Åである.T原子層とUーGa(1)層の間にGa(2)層が挿入されたHoCoGa_5型構造をとることが解った. 磁化率の温度依存性ついては,T=Fe,Niは高温域では局在型キュリ-ワイス則に従い,特に,UNiGa_5は84Kに反強液性秩序を表すピ-クを示す.これらに対し,UCoGa_5の磁化率は殆ど温度に依存せず,むしろ温度下降に伴って僅かに減少し,遍歴的であることがわかる. 低温の電子比熱係数γはT=Fe,Co,Niに対し,それぞれ,42,6.9,30mJ/K^2・molと求められ,UCoGa_5のf電子は遍歴,バンドとなっていると考えられる. 電気抵抗の温度依存性は金属的で,UNiGa_5はT^N以下で磁気秩序を反映し急激に減少する. 今後,この化合物系においては,UNi_<1ーx>CoXGa_5を作成し5f電子の遍歴から極在型にいたる過程を追跡するとともに,この系の単結晶化を行い物性を精密化する.さらに,新物質の探索と物性評価を行う.
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