Research Abstract |
本研究では,高山地域での雪面熱収支モデルの開発と衛星マイクロ波リモートセンシングによる広域雪水文情報抽出の基礎研究として,雪面熱収支と積雪のマイクロ波誘電特性に関する比較研究を行った。 1.雪面熱収支の比較研究: 標高(300〜3400m),地形(平坦地,斜面,谷部),地被条件(森林,無林地)が異なる7箇所における融雪観測を実施し,放射,顕熱,潜熱に関する熱収支モデルを構築した。これらのモデルを用いて雪面熱収支特性を比較して結果,1)季節的には放射収支の違いが熱収支に大きな影響を及ぼす,2)空間的には,a)放射収支は標高には影響される傾向が小さいが,3400mの高所になると局所的な気象の影響により放射収支量が低下する,b)顕熱交換量は高所ほど増加するが潜熱交換量は低下する,c)谷部では日射の遮蔽があるものの,アルベド低下と長波長放射収支の増加により,放射収支は余り変わらない,d)谷部では多湿な斜面下降風のため潜熱交換量が極めて大きい,e)森林が放射収支に与える影響を,短波・長波とも森林の遮蔽率で表現される,ことが示された。 2.積雪のマイクロ波誘電特性の比較研究: 積雪のマイクロ波伝搬特性を表す放射・吸収・散乱すべてに関与する誘電率を,携帯型誘電率計装置(Lband,Cband)を用いて計測し,積雪の含水率および密度と水滴の付着形状との関係を調べた。さらに,既往のモデルの適合性の評価から,積雪を球形の氷粒子にレンズ状の水滴が付着した混合物と仮定し,さらにその付着形状の変化を体積含水率で表現する山本ら(1984)の式の妥当性を現地データを基に検証した。また,長岡と札幌での積雪断面観測データより,積雪のマイクロ波誘電率プロファイルの時系列変化特性を比較し,湿雪地域である長岡の誘電率プロファイルの多様性を提示した。
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