1991 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代・中世における仏教建築と住宅建築の影響関係の研究
Project/Area Number |
03452235
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 恵介 東京大学, 工学部, 助教授 (50156816)
|
Keywords | 仏教建築 / 住宅建築 / 内部空間 / 仏事 / 密教 |
Research Abstract |
仏事がおこなわれた建築の内部には、どのような空間が造り上げられており、それが仏堂と住宅ではどのように異なるのか、あるいは異ならないのか、明らかにすることが本研究の大きな目的である。本年の研究では、その基礎的な考察として、平安時代初頭の仏教建築における,内部空間について検討した。 元来仏教建築、特に本尊を安置する建築(金堂など)では、建築の中央に仏像を安置し、内部は仏の専有空間であった。これは人が入ることが出来るか、否か、という古展的な議論に拘らず、内部空間の特質として認めることができよう。すなわち、建築の内部には実体としての仏像が存在し、それが堂内を支配していたのである。 一方、伝統的な日本建築ではどうであっただろうか。仏教建築が日本に導入される以前の建築として住宅があり、その他では恐らく神社建築が成立していたであろう。住宅(住居を含む)の内部には中心がない。睡眠や炊事のための施設は当然内部に想定されるが、それが中心を占めるような象徴的な性格をもったとは考えにくい。したがって、内部空間は様々な目的のために開かれた空間であり、そこで催される行事のために毎度異なる空間が創り上げられていたのである。これが住宅の内部空間の大きな特徴である。 平安時代初頭には、空海・最澄によって密教が導入された。同時に灌頂・修法といったあたらしい行事形式が中国からもたらされた。両界曼茶羅などの絵画を本尊とする新しい形式であって、専用の建築(灌頂堂・真言堂)が幾つか設けられた。また内裏や貴族の住宅でもこの行事が開催された。すなわち、この建築形式では、奈良時代以来の内部空間が、すっかり姿を変え、何もない空間となったのである。仏教建築と住宅建築の内部空間の交流関系はこの時点から始ったと判断してよさそうである。
|