1991 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡現象間の競合による高分子混合系における新しいタイプのパタ-ン形成
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03452265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 肇 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (60159019)
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Keywords | 相分離 / 結晶化 / 液晶化 / ゲル化 / 化学反応 / 競合現象 / 高分子混合系 / 非平衡現象 |
Research Abstract |
本年度は、相分離と他の非平衡現象、特に結晶化・液晶化との間の競合を研究するために、顕微鏡観察により基礎となる相図の作成を行った。この過程で、特に結晶化と相分離現象との競合に、我々が予想したようにそれぞれの非平衡現象が単独に起こる場合には見られない新してタイプの興味深いパタ-ン形成を観測された。また、液晶化と相分離現象の場合には、液晶・等方相の相転移線が、共存曲線の臨界点付近で、相図をよぎる3重臨界点的な相面を持つことが明かとなり、現在3重臨界点付近での系の挙動を研究中である。また、研究の過程で、LCST型の相図を持つ高分子水溶液系において、その相図が2重井戸形の形状をもつ場合、極めて異常な相分離現象が起こることをみいだした。すなわち、高分子濃度が低い場合、深いクエンチのもとでは、相分離により小さなドロップレットが形成された後、粗大化が起きず、その状態がほぼ定常的に続くことが明らかになった。この異常な相分離現象は、粒子のブラウン運動に基づく粒子の動的安定化という新しい機構を示唆している可能性があり、現在実験・理論の両面から検討中である。高分子濃度が、高い場合にも通常の相分離現象とは全く異なったパタ-ン形成がみられ、これは、相分離により非常に濃厚な高分子系と殆ど100%の水に相分離するという2重井戸型相図系の特徴に由来することが明かとなった。現在、パタ-ン形成のダイナミクスについて画像析を用いた定量的研究を行いつつある。 当初予定していた高解像度画像解析システムを確立するため、本年度冷却CCDカメラ(米国Photometrix社製)を購入し、現在そのセットアップを終わり、現有の画像解析システムとのハ-ド・ソフトの接続を含めたシステムの構築を行っている。このカメラは、空間分解能1300X1000、強度分解能12bitを有し、本研究の目的に十分な性能を有することを実際の上記のパタ-ン形成過程の観察に用い確認した。現在、本システムを用いて、競合現象下のパタ-ン形成を支配する基礎的物理因子を探るべく準備を行っている。
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[Publications] H.Tanaka: "A New Method for Direct Determination of the Time Sequence of Nucleation from Spatral Pattern Divided by Sphewlates" Japanese Journal of Applied physics. 30. L1310-L1313 (1991)
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[Publications] 田中 肇 (分担執粟): "高分子の相溶化と評価" 技術情報協会, (1992)