1991 Fiscal Year Annual Research Report
脂質分子集合体ベシクルの一重膜および多重膜形成エネルギ-に関する化学熱力学的研究
Project/Area Number |
03453015
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
児玉 美智子 岡山理科大学, 理学部, 助教授 (40101282)
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Keywords | phosphaticlylglcerol / 高感度示差走査熱量計 / 一重膜ベシクル / 多重膜ベシクル / 高感度恒温型反応熱量計 / phosphaticlylethanolamine / ヘリックス棒状ベシクル |
Research Abstract |
1.酸性リン脂質,phosphaticlylglycerol(PG)を先ず,対象物質として選び,種々の塩濃度において多重膜ベシクルを形成し,これらのベシクルの集合形態の移行過程を現有の高感度示差走査熱量計を用いて,ベシクルの有するゲル-液晶相転をモニタ-することで追跡した。この熱測定実験と平行して,形態変化が著しいと見なされるベシクルについては,ネガティブ染色法による顕微鏡撮影を行ない,形態変化をより明確にした。以上の研究によって明らかにされた成果を要約する:i)PGの多重膜ベシクルは液晶相温度での熱処理によって〜100nmサイズの一重膜ベシクルに移行した後に,大きいサイズ(〜500nm)のベシクルを経てヘリックス構造を有する円筒状の棒状ベシクルに移行した。この移行過程の速度は塩濃度に依存し,高温濃度はこの速度を低下させた。ii)i)の実験結果を基にして,多重膜ベシクルから一重膜ベシクルへの移行に伴われるエネルギ-(エンタルピ-)を科研費で購入した高感度恒温型反応熱量計を用いて測定した。iii)その結果,PG1モル当りについて2Kcalに相当するエネルギ-が放出されることで多重膜から一重膜ベシクルへの移行が達成されることが明らかにされた。この結果は,中性脂質PCの結果とは全く異なり,一重膜ベシクルの方がより熱力学的に安定であることを示す。 2.中性リン脂質,phosphaticlylethanolamine(PE)を次に対象物質として選んだ。これはPCリン脂質ほど親水頭部のサイズは大きくなく,調製された小さいサイズの一重膜ベシクルは直ちに,大きいサイズ(〜100nm)の一重膜ベシクルに移行した。その後,このベシクルも上述のPGと同様にさらに大きいサイズに移行した後に,ヘリックス構造を有する棒状ベシクルに至った。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] M.Kodama and S.Seki: "Thermodynamical Investigations on the phase Transitions of Surfactant-Water System" Advances in Colloid and Interface Sci.,. 35. 1-30 (1991)
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[Publications] 児玉 美智子,関 集三: "両親媒性物質:界面活性剤およびリン脂質の分子集合体発現に対する水の役割" 熱測定. 18. 81-88 (1991)
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[Publications] M.Kodama,Y.Takaichi: "Calorcimetric Investigations of Phase tiansitions of Sonieated Vesicles of DMPC and Their Stakilities" J.phys.Chem. (1992)
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[Publications] 児玉 美智子,橘高 茂治,高市 恭弘: "生体膜モデル・リン脂質ベシクルの熱特性と熱力学的安定性に関する研究" 熱測定. (1992)
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[Publications] 児玉 美智子,高市 恭弘,秋吉 一成,砂本 順三: "ポリエチレン誘導体によって誘発されるベシクル融合の高感度恒型反応熱量計を用いての直接測定" 熱測定. (1992)
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[Publications] 児玉 美智子(日本生化学会編): "新生化学実験講座 第4巻脂質II,7章,リン脂質の物性測定(P91〜99を単著)" 東京化学同人(東京), (1991)
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[Publications] 関 集三監修,橘高 茂治,竹田 邦雄,児玉 美智子訳: "エベレットのコロイド科学の基礎" 化学同人(京都), 350 (1992)