1992 Fiscal Year Annual Research Report
ピロン類の[4+2]型増環反応の開発とその反応機構的研究
Project/Area Number |
03453029
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大方 勝男 広島大学, 理学部, 助教授 (50033882)
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Keywords | 不斉反応 / 面選択性 / クマリン / クモロン / [4+2]型環化反応 / 軌道対称性 / ピリリウム塩 / 協奏反応機構 |
Research Abstract |
1.活性化クマリンの不斉[4+2]型環化反応: 3-アルコキシカルボニルクマリンのアルコキシ部分にl-メンチル基や(-)-8-フェニルメンチル基を導入したクマリン誘導体と共役ジエンとのDiels-Alder反応における面選択性について調べた。アルコキシ部分がl-メンチル基の場合は45%deで2種のジアステレオマーが高収率(99%)で生じた。(-)-8-フェニルメンチル基の場合は単一生成物のみが良好な収率(89%)で生成した。この生成物の構造は各種のスペクトルにより決定した。特に環接合部の立体配置はX線結晶解析により、シス配置でR-立体配置であることが明らかとなった。2-メチル-1,3-ブタジエンや共役シリルオキシジエンとの反応では、高い位置および立体選択性で環化生成物が得られた。 2.活性化クロモンの不斉[4+2]型環化反応: 3位にアルコキシカルボニルクロモンのアルコキシ部位にl-メンチル、(-)-8-フェニルメンチル基を導入した化合物の面選択性について検討した。種々のルイス酸で[4+2]型環化反応を行なった結果、塩化亜鉛の存在下塩化メチレン溶液中、室温で2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンと反応させると高い立体選択性(100%de)で環化生成物が得られた。この際も2-メチル-1,3-ブタジエンと反応すると位置及び立体選択性とも非常に高くなった。環化生成物の環接合部はシス配置で、立体配置はクマリンの場合から推定して2S,3Sと考えられる。 3.クマリン、クロモンの[4+2]型環化反応の反応機構: 反応中間体の補捉や生成物の立体化学の考察およびモデル化合物のHuckel拡張法で求めた反応部位のπ-軌道の対称性などを考慮して反応機構を推定した。クマリンと共役ジエンとの反応は活性化した場合も活性化しない場合にもDiels-Alder反応にみられる典型的な協奏的な反応機構であるが、ピリリウム塩として活性化したクロモンと共役ジエンとの反応はアリルカチオン中間体を経由する段階的な反応機構で進んでいろものと思われる。
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